まるでSF!凄すぎる進化を遂げる「人体拡張」 パラリンピックがオリンピックを上回る日
彼の義足は、脳からの信号を受け、義足内のセンサーから得たデータに基づいて動きを予測し、生身の脚と同じように意図して動かすことができる。その能力は、脚を失ったダンサーが踊れるほどだ(注)。
ハーはさらに登山に特化した義足を開発し、その登山能力は事故前の彼自身を凌駕するものになった。登山仲間の何人かは、「追いつくために自分も脚を切断するぞ」と毒づいたと言う。ハー博士は現在、MITメディアラボのバイオメカトロニクス・グループを率いている。
義肢は、障がい者の活動レベルを健常者に近づけるものから、健常者を超えるものへと進化しつつある。私たちは、パラリンピアンのほうがオリンピアンよりも優れた記録を出しうる時代にいるのだ。
実は、義肢に対するニーズは大きい。たとえば米国では、イラク、アフガニスタンでの任務中に地雷で肢体を失った元兵士が数多くいて、彼らの社会復帰が大きな課題となっている。
それに対しては、義肢の開発コストも大幅に低下しつつあるという朗報がある。2015年には、映画「アイアンマン」のトニー・スターク役で知られる俳優のロバート・ダウニー・Jrが、マイクロソフト社のプロジェクトに参加して、片腕を失った7歳の少年にアイアンマン形のロボットアームをプレゼントした。アームは3Dプリンター製で、製作コストはわずか350ドルだった。
次世代ARは情報を網膜に投影する?
こうしたハイテクの義肢は、人体拡張に関するテクノロジーの1つに過ぎず、他にも、視覚や聴覚などに関する拡張も開発が進んでいる。たとえばAR(拡張現実)だ。ARはVR(仮想現実)を現実世界の像に重ねて見せるもので、最近では「ポケモン・ゴー」で世界的に有名になった。
現在のARはスマホや、HUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)の中で見るものが主流だが、ウェアラブルであるメガネに映像を投影するものもすでに存在している。さらにその先にはコンタクトレンズ、もっと進めば網膜への投影も想定されている。ある対象に目を向けると、必要な関連情報や映像が重なって視野に現れるというものだ。もちろん背後ではAIが動いている。映画「ターミネーター」シリーズで、アーノルド・シュワルツネッガー演じるターミネーターの視野に映るものが、そのイメージにやや近いだろう。
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