「血縁者」との結婚が産業革命後に減った理由 世界最大級の家系図で明らかになったこと

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だが、家系図に関しては、ジェニ・ドットコムのようなSNSからデータを取得する以外に、良質なデータを得る方法は今のところない。昔の研究者は、教会の記録や各地の出生記録や死亡証明書をコツコツ集めなければならなかったが、クラウドベースの家系図を使えば、「世界中の人に関するデータをスピーディーかつ低コストで結びつけられる」と、コロンビア大学のコンピューター科学教授でもあるアーリックは語る。

ジェニ・ドットコムは、世界中に散らばっている数百万人のデータを基に、ひとつの巨大な家系図を構築しようとしている。すでに既存の情報から、寿命の長さは従来考えられていたほど遺伝しにくいことや、子どもを抱えた父親よりも母親のほうが移住に踏み切る確率は高いことなどがわかった。

未登録のデータも少なくない

同時に、私的に作成された家系図をベースにした調査では、一定の偏りが出やすいことに留意する必要があると、コーエンは言う。たとえば、生まれて間もなく死んでしまった子どもや、子どもがいなかった人は、家系図から省かれる場合が多いというのだ。また、奴隷貿易や迫害を逃れるための移民は記録されないことも多いという。

こうした問題点はあるものの、家系図と遺伝情報や健康情報を組み合わせれば、遺伝性疾患リスクについての新たな発見が得られる可能性がある。家系図と国勢調査や納税記録を組み合わせれば、格差などの社会学的問題で発見があるかもしれない。

「こうした情報を組み合わせれば、多くの発見が得られる可能性がある」とコーエンは語る。「ただしプライバシー上のリスクも高まるから、注意が必要だ」。

(執筆:Stephe Yin記者、翻訳:藤原朝子)

© 2018 New York Times News Service

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