池澤:2020年から、日本の小学校でもプログラミング必修化が始まります。まつもとさんは、プログラミングから子どもたちがどのようなことを学んでほしいですか。
まつもと:正直、私は学校教育にプログラミングは向かないと思っています。問題としては、幼い頃からプログラミングに触れてきた子とそうでない子がいるため成績がつけにくいことと、短期的にはプログラミングの楽しさを教える先生がいそうにないことが挙げられます。
プログラミングを長く続けている人の多くは、プログラミングが楽しいから続けています。なので、必修化するのであれば、「プログラミング教育」ではなく、「楽しさ」を教える「プログラミング体験」であってほしいです。
教育によって、プログラミングが嫌いな子を増やすより、体験によってプログラミングに興味を持った子を発掘し、別途、部活、少年団、地域コミュニティなどで、そういった子が伸びる環境を用意するほうが有意義ですよね。
今後のRubyは
池澤:IoTの普及やAIの台頭など、今後も大きく世の中が変わっていくなかで、Rubyはどういったものになっていくのでしょうか。
まつもと:これから時代が大きく変化しても、OSやCPUなど、Rubyの根本を揺るがすような変化はないと考えています。しかし、システム・アーキテクチャは変わっていくでしょう。たとえば、IoTが普及していくと、小さなデバイスでひとつのシステムを構成するようなアーキテクチャがメインストリームになってくるかもしれません。
未来は予測不可能なものですが、このような時代の変化に合わせて、Rubyも臨機応変に対応していきたいと思います。
一方で、ユーザーが離れてしまうような劇的な変化は避けたいとも考えているので、文法自体は変えることなく、基本的には内部構造の変化で吸収したいと思っています。
これから25年先のRubyにとってのいちばんのボトルネックは、そのころには私も77歳なので、私自身がこの世にいない可能性があるということですね。幸いなことに、RubyにはRubyを開発してくれるコミッターはたくさんいるのですが、言語のデザインは未だに私がしているので……。
後継者も一応なんとなくは考えているのですが、合議制だけは、無難な決断が増えてしまうので絶対に避けたいと思っています。なかには「まつもとさんの発言はSNSや記事にたくさん残っているから、それを利用して人工知能をつくればいいんじゃないか」と言ってくる人もいます(笑)。
なにはともあれ、これからも多くの人にRubyを使ってもらうために、どんな時代もどんな困難も生き抜いていきたいです。
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