池澤:Rubyの発起人はまつもとさんですが、ここまでRubyが成長できたのは、コミュニティの力も大きいのではないかと思います。このコミュニティはどうやって成立してきたのでしょうか。
「コミュニティ」の存在はオープンソース時代最大の謎
まつもと:Rubyの発起人は私ですが、私以外にも「コミッター」と呼ばれるRubyの開発者がいて、更にRubyを使うユーザーがいて、Rubyのコミュニティが形成されています。
このコミュニティは、私が仕掛けたというわけではなく、Rubyのことが好きな人が自然に集まって、いつのまにか成立していました。
この「コミュニティ」の存在は、実はオープンソース時代最大の謎と言われています。
当然ですが、オープンソースソフトウェア(OSS)を開発するだけでは稼げませんからね。最近こそ、企業もOSSを使うようになってきたので、仕事の一環でコミュニティへ貢献できたり、企業自体がOSSのスポンサーになったり、貢献してきたことが就職や転職に有利に働いたりするようになってきましたが、以前はそれすらなかったので、大学の研究もしくは、技術的好奇心でやっている人が大半でした。
池澤:コミッターの方々とは、どのような共同開発をされてきたのでしょうか。
まつもと:今ならGitやCVS、Subversionのような便利な共同開発ツールがありますが、25年前にはもちろんそういったツールはありません。
なので、NetNews(今で言う掲示板のようなもの)に直接プログラムを貼りつけていました。サイズが大きすぎて一度では貼りきれないので、48個くらいに分かれた圧縮ファイルにして(笑)。
それをツールを使って元のプログラムに戻して、開発して、また掲示板に貼り付けるというスタイルで共同開発を行っていました。
それから5年ほど経ったころにCVSを採用して、そのあとはあまり現在のスタイルと変わらず、共同開発ツールを利用して開発を進めています。
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