「社会派映画」に挑んだスピルバーグの使命感 ペンタゴン・ペーパーズ事件を描いた力作
そんな本作の制作が発表されたのは、2017年1月に共和党のドナルド・トランプが大統領に就任してから、実に45日後のこと。熱心な民主党支持者としても知られるスピルバーグ監督だけに、大統領が主要メディアを「民衆の敵」と決めつけ、報道の自由を脅かそうとしている現代にこの映画を作ることについて、使命感のようなものを感じたに違いない。
企画決定のプロセスのみならず、撮影が開始されてからも驚異的なハイペースで製作が進められた。もともとスピルバーグ監督は、早撮りの名手として知られている。そして予算超過がほとんどなく、コストパフォーマンスのいい監督としても知られている。それはつまり、自分が何を撮るべきかを熟知しているということだ。決断力の早さ、ずば抜けた効率のよさで作業を進めており、改めて映画製作能力の高さを印象づけた。
【3月1日18時40分追記】記事初出時、「『レディ・プレイヤー1』の制作をいったん保留し」と表記しておりましたが、制作を中断したとの誤解を招く可能性があるため表現を変更しました。
企画から1年足らずで公開にこぎつける
2017年前半に企画・製作がスタートした本作は、なんと年末の12月14日(現地時間)にはワールドプレミア上映を果たした。そして12月22日(現地時間)には全米9館で限定公開。さらに今年の1月12日(現地時間)には全米2819館で拡大公開され、大ヒットを記録している。なお、『レディ・プレイヤー1』の制作は順調に進んでおり、アメリカでは『ペンタゴン~』の3カ月後となる3月29日に全米公開が予定されており(日本公開は4月20日)、大きな遅れを生み出すことなく、作品を作り上げた。
アメリカ合衆国憲法修正第1条には「連邦議会は、国境の樹立、あるいは宗教上の自由な活動を禁じる法律、言論、または報道の自由を制限する法律、ならびに人々が平穏に周回する権利、および苦痛の救済のために政府に請願する権利を制限する法律を制定してはならない」と制定されている。これはつまり、市民の基本的人権を守り、政府が「報道の自由」を妨げることはあってはならない、ということを明文化したものであり、「権力の暴走を監視する」というマスメディアの存在意義を、憲法が保証しているということにほかならない。
この映画で描かれている1971年の世界は、驚くほどに今の状況と似通っている。スピルバーグ監督が「今、撮るべき作品」と語るその意味と切実さを、ぜひかみしめてもらいたい。
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