パナと三菱電機のCMがこんなにも違う理由 「完璧」な共働きか、「あるある」の夫婦か

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炎上を回避しつつ「あるある」を狙うために表現は細心の注意を払っている。実は、ほとんどのバージョンで若林さんも家事をやっている。杏さんがコーヒーを飲んでいる横で若林さんだけがアイロンをあてているバージョンもあり、きちんとバランスを取っている。杏さんの役柄も「完全に専業主婦という設定にはしていない。働いているかもしれないし、そうじゃないかもしれない」(桒原グループマネージャー)。

女性の視線を意識しているのはパナソニックと同様だが、独身でも既婚でも専業主婦でも共働きでもいい。「あるある」の困りごとを解決してくれる三菱の家電というイメージを広げることに成功している。

ここまでは両社のCMの描き方の違いに注目してきたが、広告宣伝戦略全体で見ると共通点がある。動画コンテンツを作る際、テレビだけでなく、ネットを重視するようになっている点だ。

ネットでは機能の解説を重視

パナソニックは、「動画を作ってシーンごとに、ニーズごとに出し分けるようにしている」(高須課長)。テレビと比べると、ネットでの動画配信にかかる費用は圧倒的に安い。数多くの動画をアップしておけば、消費者は自ら必要な動画を選んで見てくれる。パナソニックの場合、テレビCMでは機能の説明は極力減らしたバージョンを流しているが、ネットには機能を解説する動画もしっかり用意している。

一方の三菱電機の桒原マネージャーは、「ネット動画では遅れていて、まだ試行錯誤のど真ん中」と率直に語る。ネット用の動画を本格的に制作し始めたのは2015年秋。5分前後のムービーを3本作った。第一弾の「マザー」は出産で入院している母親に代って家事をやる娘が主役。第二弾の「パートナー」は結婚した幼なじみの物語。第三弾は妻を亡くした夫の話。どれも商品の説明は入れずにストーリーテリングに徹した。

掃除機「風神」の特別ムービー(三菱電機のYouTubeサイト)

それぞれ100万回以上の再生を達成できたことで、昨年はエアコン「霧ヶ峰」の50周年に合わせた記念ムービーや掃除機「風神」の特別ムービーを制作。霧ヶ峰の「人生に吹く風」は男性と女性が生まれたところから新しい家族を持つまでの成長をそれぞれの視点で感動的に描く。「風神 運命のサイクロマンス」は女子高生が掃除機に恋をする、というコメディで、それぞれ300万回以上も再生された。

「三菱電機は特に若者からの認知度が低い」(桒原マネージャー)。ネットは挑戦の場と位置づけ、この先も挑戦を続ける考えだ。

マーケティングの古典用語に「AIDMA(アイドマ)の法則」がある。アテンション(注意)、インタレスト(関心)、デザイア(欲求)、メモリー(記憶)、アクション(行動)の頭文字で、消費者が行動するまでのプロセスを説明したものだ。

「ネットがなかったときには短時間のCMでAIDMAに結びつける必要があった。今はCMでやらなければいけないことはアテンションとインタレストまで。マスに伝える力が強いはテレビはAとIは得意とするところ。その先にデザイア、メモリー、アクションはネットの出番」(関根代表)。

テレビとネットをどう組み合わせるかは、多くの企業にとっても課題になっている。宣伝上手な大手家電メーカーの試行錯誤から学べるものがあるかもしれない。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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