パナと三菱電機のCMがこんなにも違う理由 「完璧」な共働きか、「あるある」の夫婦か
メインで家事を担うのは妻の杏さん。料理上手で疲れていても掃除をてきぱきとこなす。同居するお姑さんとも仲良くしているできた女性だ。若林さんも料理、後片付け、アイロンかけもしている。ただ、その手つきはどこかぎこちなく、“お手伝い感”は否めない。妻と母親が旅行に行っている間はダラダラして掃除をさぼるなどちょっとだらしない姿も見せる。
2人とも完璧とは言い難い。エアコンの温度設定をめぐって夫婦でリモコンの取り合いもする。そんなケンカともいえないやりとりから夫婦仲の良さは伺えるものの、理想というよりは等身大の夫婦像を提示する。
アプローチの違いから見えてくるものは
「日常の幸せに家電製品が役に立てるということを伝えたかった」と語るのは、パナソニックで家電を受け持つアプライアンス社、コミュニケーション部クリエイティブ課の高須泰行担当課長。
成熟した国内市場にあって近年、白モノ家電は好調だ。台数自体は頭打ちに近いが、平均単価が着実に上がっている。この原動力となっているのが共働き世帯。家事負担を減らせる高機能家電の購買意欲が高い。
パナソニックは2015年から「ふだんプレミアム」というキャンペーンを開始、一段上の高級路線を打ち出している。メインターゲットとして共働きの夫婦を定め、スタートしたのが西島さんと奥貫さんの夫婦のCMシリーズである。
「共働き世帯で白モノ家電の購入で決定権を持つのは、ほとんどが女性側。女性の共感を意識してCMを作っている」(高須課長)。「ふだんプレミアム」の前から宣伝キャラクターを務めていた西島さんは、コミュニケーション部に大勢いる女性社員からの人気も高かった。そこから女性陣があこがれるような、完璧な夫がいる理想の夫婦というコンセプトにたどり着いた。
さらにCMでは家電の機能そのものを声高にアピールすることは控え、高機能な家電によって家事の省力化や時短を実現し、手に入れられる”幸せな日常”をドラマのように描いている。
ストーリー性を強めたことで可能になったのが製品群としてのアピールだ。たとえば冷蔵庫がメインのCMであっても、キッチン回りにさりげなくパナソニック製品を置き、時にはそれを西島さんらが使うことで、ブランド全体のイメージ広告のような作りとなっている。
パナソニックがこうした戦略を取るのは合理的だ。国内でパナソニックの家電製品のラインナップは随一。冷蔵庫、洗濯機、エアコンはもとより食器洗い機、ロボット掃除機、IHクッキングヒーター、理美容家電まで取りそろえている。
高価格帯では掃除機のダイソン、アイロボット、トースターのバルミューダなど新興勢力の攻勢を受け必ずしも優位とはいえないが、圧倒的な製品ラインナップは他社にはマネできない。
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