パナと三菱電機のCMがこんなにも違う理由 「完璧」な共働きか、「あるある」の夫婦か

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一度に作った料理を大型冷蔵庫で保存し、平日夜に電子レンジを使って短時間で調理する。後片付けは食洗機に任せ、ゆっくりとした家族の時間を楽しむ。大型の全自動洗濯乾燥機で洗濯をして、脱臭ハンガーや衣類スチーマーでアイロンの手間を省く。その大半をパナソニック製品でまかなうことができる。

この製品群、ブランド全体でのアピールという方向性はさらに強まっている。今年3月に創業100周年を迎えるパナソニックは、昨年8月から大々的なキャンペーンを開始している。ここではパナソニック全体の宣伝キャラクターである綾瀬はるかさんや理美容家電のキャラクターである水原希子さんが西島さんらと共演。パナソニック製品がとけ込んだ楽しそうな日常を描き出す。

CM総合研究所の関根心太郎代表は「消費者が欲しいのは家電の機能ではなく、その家電を使うことで得られる生活の向上。それをストーリー仕立てでうまく見せることに成功している」と評価する。

「共感してもらうことを狙った」

 「“あるある”と共感してもらえることを狙った」と説明するのは、三菱電機宣伝部BtoCコミュニケーショングループ桒原(くわはら)幸志グループマネージャー。その桒原マネージャーには悩みがあった。「一般の方は三菱電機という企業に対する印象が薄い。その中で家電は比較的認知度が高い。それでも他社に比べると十分ではない」。

三菱電機の桒原幸志マネージャー(記者撮影)

ただ、調査すると三菱の家電を購入した顧客の満足度は非常に高いことが分かった。「かゆいところに手が届く、という声があり、これだ、と」。日常生活でのちょっとした困りごと、それを三菱電機の家電で解決する。杏さんが「ニクイね、三菱」という決め台詞を締めるというフォーマットが固まった。

日常生活では、ちょっとした困りごとが起こるもの。そこで「あるある」という共感を大事にする現在のシリーズができあがった。ちなみにエアコンのリモコンを取り合うバージョンは、桒原家であったことが元になっている。「このCMは好感度が非常に高かった」(CM総合研究所の関根代表)というから狙いは当っている。

CMの表現が問題視され炎上しやすい昨今、三菱のCMは結構きわどい線を行っている。夫婦で家事をやっているとはいえ杏さんの活躍が目立つ。一歩間違えば、家事は女性がやるものという価値観を押しつけているといった批判を受けかねない。それでも現実に女性が家事を担う割合が多い以上、「あるある」と思ってもらうシーンを描こうとすれば杏さんの家事負担が多くなってしまう。

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