日立・三菱電機が挑む「研究開発」改革の全貌 マーケットインと起業家精神でR&Dを変える
日本の電機メーカーはかつて世界をリードした開発力・技術力を取り戻すことができるか。キーワードは“研究者のマーケットイン”、そして“起業家マインド”だ。
日立製作所は2016年12月、横浜研究所内に顧客と共同で技術開発する「オープンラボ」を開設した。もの作り、ITシステム、交通、データ分析、セキュリティの5分野に対応した専用の開発スペースを用意。相談に訪れた顧客と日立の研究者が密にやりとりし、課題解決に向けた技術開発を行う。こうした顧客との共同開発を前提にしたラボは2カ所目となる。
幅広い顧客と日常的に接点
「技術ありきではなく、お客様の課題ありき。その課題を日立の技術で解決する必要性が増している」(テクノロジーイノベーション統括本部副統括本部長の矢川雄一横浜研究所所長)。これまでも研究者が営業と客先へ足を運ぶことはあった。逆に、顧客が研究所を訪れることもある。だが、研究者が幅広い顧客と日常的に接する機会は少なかった。横浜研究所の坂本健一企画室長は、ラボ開設で「研究者が顧客ニーズを意識するようになる」と期待を込める。
日立は研究開発力で日本有数の企業だ。日立研究所(茨城・日立市)、中央研究所(東京・国分寺市)を筆頭に、ノーベル賞候補に挙げられる人材もいる。反面、その研究成果を事業に結びつけるのはあまり得意ではない。日立の経営陣や研究開発部門のトップは長らくこうした問題意識を持っていた。
そんな日立が研究開発体制を大きく見直したのは2015年4月のこと。研究所単位だった組織を、経営が求める役割で3分類して再構築した。
顧客に近い課題に取り組む「社会イノベーション協創統括本部(CSI)」、顧客視点を持ちつつ短中期的な技術基板の開発に重点を置いた「テクノロジーイノベーション統括本部(CTI)」、そして長期視点で事業の種を見つけて育てる「基礎研究センタ(CER)」の三つである。
それまでは日立の研究所は”象牙の塔”となりがちで、事業につながる顧客視点が薄かった。もちろん、すぐに収益に結びつかない基礎研究も大切ではある。だが、企業の研究所である以上、バランスを欠いてはいけない。 組織再編により、短中期視点で事業性や顧客を意識した組織(CSIとCTI)と、長期での基礎研究組織(CER)でそれぞれ優先順位を鮮明にした。
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