富士電機の「自動販売機」が中国で売れる理由 日本では50年近くトップを維持する実力

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富士電機の自動販売機。同社は国内シェア約5割のトップメーカーだ

駅や商業施設など、さまざまな場所で見かける自動販売機。ペットボトルや缶はもちろん、カップ飲料や食品まで、さまざまな物を購入できる。その自販機市場で50年近くトップシェアを守っている会社がある。発電設備や産業プラントを手掛ける重電大手の富士電機だ。

同社は国内にとどまらず、中国で投資を加速し、自販機の拡大に本格的に乗り出している。自動販売機事業の売上高は国内と海外を合わせて610億円(2015年度)。全体の売上高8135億円に占める割合はわずか7%に過ぎない。その事業に、なぜ力を注ぐのだろうか。

国内シェアは5割でトップ

「10年後には10倍、それ以上かもしれない」――。こう豪語するのは富士電機の朝日秀彦執行役だ。中国での自販機事業の売上高は2015年度で100億円程度。これを今後10年で1000億円以上に拡大させるというのだ。

中国の大連工場では三重工場で培った自動化設備のノウハウを投入している。地場メーカーに負けないために、最新鋭の設備を積極的に入れていく

売り上げ拡大に向けて、すでに手は打っている。2003年に稼働を開始した中国の大連工場を2016年3月には生産能力を従来の2倍に増強し、年間5万台の生産体制を構築。さらに、7月には第2工場にも着工した。完成すれば、生産能力は10万台へと大きく引き上げられる。今や中国の自販機事業は、富士電機にとって期待の成長分野といえる。

富士電機は1923年に古河電気工業と独シーメンスの資本・技術提携によって、モーターの会社として設立された。現在は発電設備などインフラの会社の印象が強いが、ジューサーミキサーや洗濯機などの家電を手掛けていた時期もあった。

これらの技術を基に新たな事業を模索する中で、1970年頃に参入したのが自販機事業だ。国内の経済成長と共に順調に拡大を遂げ、現在の国内シェアは缶の自販機で45%、紙カップを含むと50%にのぼる(国内の飲料自販機の設置台数は2015年時点で約250万台)。

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