米倉誠一郎「幕末人はこんなに創造的だった」 砲術家・高島秋帆のクリエイティビティ
キーワードは「創造的対応」
僕は、イノベーションの研究をしている経営学者で、ベンチャービジネスやソーシャルビジネスにも関心を持ち、最近では、アフリカやバングラデシュでも行動しています。
しかし、研究者としてのキャリアは経営史で、幕末・明治維新の研究から始めています。歴史家として40年にわたって少しずつ書き溜めてきた小稿をまとめて、昨年、『イノベ―ターたちの日本史――近代日本の創造的対応』として上梓しました。
この本のキーワードは、「創造的対応」です。これはあまり知られていない言葉かもしれません。これは「イノベーションの父」と呼ばれるヨゼフ・シュムペーターが1947年に書いた論文で用いた概念でした。
「創造的対応」とは、外からの刺激に対して、普通に返すのか、あるいは創造的に返すのか、その差がイノベーションである、ということです。もう少しわかりやすく説明すると、想定外の創造的な対応をすることで、ドラマチックな変化が生まれるという意味です。
拙著では、幕末・明治維新から昭和初期にかけての日本近代を、「創造的対応」の視点から描いています。今日あまり知られていない人物もいれば、著名ではあるものの、その活動が知られていないというストーリーを取り上げています。一見すると近代史の本ですが、僕が経営学者としていろんなビジネスの盛衰をたどってきた経験を踏まえ、今という時代をどう見つめ、行動にどう生かしていくのか、という点を重視しています。
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