宮崎最大手・志多組破綻の内幕、窮地に立つ地方ゼネコン
「まさか」--。8月8日、宮崎に衝撃が走った。九州で2番目の規模を誇り、県内では最大手のゼネコン「志多組」が、民事再生法の適用を申請したためだ(負債総額278億円)。フェニックスリゾートホテルを施工するなど技術力に定評があった同社の破綻は、地元では驚きをもって迎えられた。
志多組の破綻は、首都圏への進出が裏目に出た典型例だ。同社はここ数年、地元公共工事の減少分をカバーすべく、首都圏での営業活動を強化してきた。マンション建設が拡大し、2007年6月期の売上高は378億円と過去最高を更新。その半分が東京支店の活動によるものだった(大手調査会社調べ、以下同)。
ところが、東京支店が取引をしていた新興デベロッパーの青木不動産とケイ・エス・シーが、6月に相次いで破綻。両社への債権約25億円が焦げ付いた。これが「引き金」となり、資材業者などが現金支払いを要求するケースが続出。志多組は一気に資金繰りに行き詰まった。
もっとも、経営危機は焦げ付きが発生する前の今年4月ごろから、一部の関係者の間でささやかれていた。同社は首都圏での営業において、低採算や悪条件での受注に走っていた。マンション業者からゼネコンへの支払い条件はいわゆる「テン・テン・パー」。着工時に工事代金の1割、中間時に1割、引き渡し時に残り8割が支払われるのが通例だ。下請けへの支払いを立て替える必要があるゼネコンにとって負担は大きい。志多組の場合は「引き渡し時の支払いも現金ではなく、そこから3カ月サイトの手形を切られることもあった」(調査会社)という。
ただでさえ債権の回収条件が悪いところに、マンション業者の不振が加わる。積もり積もった完成工事の未収入金は、07年6月期には123億円と前年度から2倍以上に膨れ上がっていた。同期の営業キャッシュフローは15億円の大幅赤字に転落。さらに資材費高騰が追い打ちをかけていたため、資金繰りショートは時間の問題だとの見方が春先から出ていたのだ。
融資先の相次ぐ倒産でメインが追加支援断念
破綻の背景には、金融機関による支援姿勢の変化もある。7月11日、宮崎市内のホテルにメイン取引行である宮崎銀行を中心に金融機関十数行が集まり、志多組支援に関する協議を行った。この時点では、宮崎銀行は支援の方向で検討を進めていた。が、同行を取り巻く環境は、その後急速に悪化する。
建設業「渕脇組」など融資先の相次ぐ倒産に伴い、宮崎銀行は7月25日に今09年3月期業績予想の大幅な下方修正を迫られた。また、志多組の資金繰り状況も、「われわれの想像以上に悪くなっていった」(宮崎銀行幹部)。さらに、急増する未収入金について詳細な開示を求めたものの具体的な回答が得られずに、志多組に対して不信感を募らせたようだ。結局同行は8月に入り、追加融資見送りを決めた。