宮崎最大手・志多組破綻の内幕、窮地に立つ地方ゼネコン

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志多組の破綻は、冷え込む一方の地元経済へも暗い影を落とす。07年1月に就任した東国原英夫知事によるメディアを駆使した宣伝効果で観光客は増えている。だが、公共事業落ち込みの逆風で、「ここ2年の間に、建設業にかかわる就労者のうち5200人ほどが仕事を辞めざるをえなかった」と、県建築業協会の新町吉男会長は話す。中核を担う建設業の低迷を受け地元産業は活気を失い、市内外の商店街では“シャッター通り”が目立つ。

さらに、東国原知事の下で入札制度改革が加速。現在はほぼすべての公共工事が入札で決められており、工事受発注の透明性は高まった。一方で、落札価格低下が地元建設業者の苦境に追い討ちをかける。「安くて入札に参加するのがばかばかしい」「落札価格は採算ギリギリ」。県内の建設関連業者から聞こえてくる声は、制度改革へのうらみ節ばかりだ。

落札の最低制限価格アップなどを求め、建設関連19団体で構成する県建設産業団体連合会が9月2日に開催した決起集会には、3000人以上もの関係者が結集した。連合会のある会員は、「いま地方の業者は悲鳴を上げている」と吐露した。

県内全体に不況感が漂っているとはいえ、目下のところ志多組を震源とする連鎖破綻がすぐさま広がる様子はない。経済産業省がセーフティネット保証制度の対象に同社を指定し、これと並行して県や商工会議所などが相談窓口を設置したことが関係者に安心感を与えた。

ただ、志多組関連ではグループ会社2社が倒産し、「他のグループ会社も危ない」といったうわさが飛び交っている。公共事業の先細りが明白な状況を受け、地元関係者の間では「いまさら県内に軸足を移しても厳しいのではないか」との見方が支配的だ。これでは再建に向けたスポンサーも容易には見つかるまい。

地方ゼネコンは、高コストの大手に代わって地方でのインフラ整備、雇用の維持という機能を果たしてきた。志多組の将来に展望が描けない現状で、宮崎県は「負の連鎖」の危険性をはらんでいると言える。

(週刊東洋経済編集部)

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