こうしてプロポーズをしてから3週間後に、婚約解消となり、2人は別れることとなった。
大失恋をしたときにすべきこととは?
その後の省吾の落ち込みと憔悴ぶりは、冒頭に記したとおりだ。
恋愛経験が少なかった省吾にとって彼女は、手をつなぎ、キスをして、男女の関係にもなった2人目の女性だった。35歳のときに付き合った1人目の女性は3つ年上で、リードされるがまま3カ月程度付き合ったのだが、なんとなく連絡がこなくなり、恋愛関係は自然消滅をしていた。
毎日のように連絡を取り合い、気持ちを確認し合い、結婚を真剣に考えたのは、佳恵が初めての女性。しかも味わったことのない緊張感の中で、一世一代のプロポーズをした。それがすべておじゃんになったのだから、失意のどん底に陥るのも無理はない。
では、こんなときはどうすればいいのか?
まず一番してはいけないことは、終わってしまった恋に執着することだ。“真剣だったからこそ、心が痛くなる。つらくなる。その苦しみはキチンと味わうべきだ”という人がいる。しかし、それは違うと私は思っている。苦しみを味わって何になる。過去の傷をなめ、感傷に浸るのは、自己満足でしかないのだ。
人の気持ちは、どんなに努力をしても手に入らないことがある。いったん背を向けてしまった人に、“私はこんなにあなたを思っています。わかってください”“私の嫌なところがあったら、あなたに好かれるように直す努力をします”そう言ったところで、相手は重たいだけだ。
そして、悲しみに浸っていたところで過去は変わらない。過去は操作できない。でも未来は、自分次第でどんなふうにも変えることができる。ならば、気持ちを切り替えて、新しい出会いに向かって進んだほうがいい。つらく苦しいときこそ、“ハイ、次!”の精神で、新しい恋の上書きするのだ。
私は、省吾に言った。
「悲しんでいる暇があるなら、どんどんお見合いしましょう。私がいくらでもお見合いを組むから、次のお相手をまた探しに行きましょう」
ただ、省吾には、お見合い以外にもしてほしいことがあった。それは、自己肯定感を上げること。「つねに一緒にいたい」「一緒にいないと寂しい」というのは、相手からの承認欲求を強く求めている状態。いわゆる依存である。なぜそうなるかといえば自分に自信がないからだ。自己肯定感が低いと何かトラブルが起こったときに、気持ちがオセロゲームのように白から黒へと一気に裏返ってしまう。
省吾には、何が起こっても自分にOKが出せる状態、自分を認めてあげる状態がつくれるように、自己肯定感を上げるプログラムセミナーに参加してもらうことにした。そこは専門家の方にお手伝いいただいた。
セミナーを受けていく中で、彼がみるみる変わっていくのを感じた。そんな中で5件のお見合いを組み出会ったのが、今交際している吉田百合子(39歳、仮名)だった。
お見合いしたときから互いを気に入り、早々に真剣交際に入り、これから一緒に未来が紡げるのか、互いの気持ちを確認し合いながら2人は結婚に向かっている。
先日、省吾から、こんなメールがきた。
「前回の婚約解消は、本当につらく苦しかったけれど、いい人生勉強になりました。僕が悩んでいたとき、鎌田さんをはじめ、心理カウンセラーの先生、母、友人、会社の先輩など、たくさんの方に話を聞いていただき励まされ、なんて自分は恵まれているんだろう、なんて幸せなんだろうと実感しました。あのときの反省点も踏まえて、吉田さんとのお付き合いは自分本位にならないように、また吉田さんの気持ちを大切に受け入れながら、大切に前に進めていきたいです」
短期間のうちに、なんと成長したことか!
大失恋をしたときに大切なことは何か、重ねて言う。
過去の過ちは真摯に反省。さりとて後悔はなし。失敗を糧にして、幸せな未来を紡ぐためには、前に進め! そしてするべきは、新しい恋の上書き、だ。
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