40歳「婚活男性」がどん底まで落ちた深刻事情 キスをして「男女の関係」にもなったが…

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「食事がノドを通らないんです」

身長175cm、もともとやせ型だった彼がさらにやせて、ガリガリになっていた。ほおはこけ、目もうつろで生気が失われていた。弱り目に祟り目、ひどい風邪をひいてしまったようで、足どりもフラフラしていた。

婚約解消は、単なる失恋よりも傷が深いだろう。これから残りの人生を共に歩んでいこうと、意を決してのプロポーズ。それを受けてもらい、あれやこれやと未来の結婚生活を思い描いていた中で、相手の気持ちが変わり、「あなたとはやっぱり結婚はできない」と別れを宣言されたのだから。

失意のどん底に陥った省吾であるが、そこから2カ月で、見事にはい上がり、新しい幸せをつかんだ。今回はその復活劇を記す。

なぜマリッジブルーを起こすのか

お見合いに限らず、恋愛の末に婚約したとしても、それが解消になるケースはそう珍しくはない。いったん決めた結婚をやめたくなるのは、いわゆるマリッジブルーに陥るからだ。

では、なぜマリッジブルーになるのか。

結婚というのは、それまで暮らしてきた生活環境が変わることだ。人には変化を楽しめる人と恐れる人がいる。環境の変化を恐れる人は、結婚後にまったく違う環境に自分の身を置くことに、漠然とした不安を感じるようになる。結婚することが楽しいとは思えず、憂鬱な気持ちが膨らむようになる。

もう1つの要因は、結婚に対する観念がつくり出す恐れだろう。“結婚とは、こうあるべき”“私の結婚観はこうだ”という思い込みが強いタイプは、自分の思いと少しでも違う状況を相手がつくると、柔軟な対応ができずに矛盾を感じるようになる。そして、“私が結婚するのは、この相手ではない”と思うようになる。

省吾のお相手、遠藤佳恵(37歳、仮名)は、後者のタイプだったように思う。プロポーズを受けて、彼とより密に時間を過ごしていく中で、彼女の考える結婚観に省吾が当てはまらなくなっていったのだ。

2人のすれ違いは、プロポーズ旅行から始まった。

省吾は、金曜の午後から2人で箱根に出向き、その旅先でプロポーズすることを計画した。プロポーズにふさわしい温泉旅館をネットで探し、そこでドラマチックプロポーズを仕掛けることにした。

それは、こんなプロポーズだった。

まずは旅館にチェックイン。夕方散歩に出掛け、真っ暗な部屋に帰ってきて電気をつけると、テーブルの上には、真っ赤なバラの花束が置かれている。それを省吾が手に取り、ひざまずいて言う。

「僕と結婚してください」

この計画はうまく遂行され、プロポーズは感動的で思い出深いものとなった。

旅行は、2泊3日の日曜帰りだったが、省吾も佳恵も月曜、火曜と有給を取っていた。省吾の中では、ロマンスカーで新宿に戻ってきたら、そのまま2人で省吾の家に行き、火曜日まで一緒に過ごすつもりでいた。ところが、佳恵は、「新宿からこのまま自分の家に帰る」という。

「どうして? 何か予定が入っているの?」

「何もないけれど、3日間一緒にいたのだから、2日間はゆっくり家で休みたいの」

「僕の部屋で休めば?」

「1人の時間をつくりたい」

ここで言い争いになった。

「横に僕がいたらいけないの?」

「1人で気持ちを休めたい」

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