KDDIは、なぜ社長交代を1年前倒しするのか 技術からサービスへのトレンド変化を象徴
おそらくインタビューが行われた9月時点で、もう退任の気持ちは決まっていたのだろう。1年で取り組める新たなテーマがないのであれば、長期的な視野で取り組まねばならない5G時代における新しいKDDIの基盤を作るための時間を増やしたほうがいい。
今後、金融や電子商取引、ヘルスケアなど事業の多角化を進めているKDDIは「ライフデザイン企業」と自らを称している。個人的にデジタル端末が好きで、キャリアとしてはインフラ構築に取り組んだ時期が長かった田中社長に対して、高橋副社長はサービス事業基盤の整備を進め、スタートアップ支援やスマートフォン時代の新規事業開発に取り組んできた。
深読みすると・・・
こうした新旧社長のキャリアの違いは、そのまま携帯電話事業のトレンドを示すものだ。今回の社長交代劇に関する経緯だけを評価するならば、KDDIは「技術」から「サービス」への時代変化を鑑みて、適切な時期に高橋氏へのバトンタッチを果たしたというニュースにすぎない。
しかし、もう少し俯瞰して深読みするならば、市場環境の変化が世代交代を促す流れを起こしているのだという見方もできる。
田中社長の時代は、テクノロジ業界全体がスマートフォンの時代を迎え、さまざまな市場ルールが変化した時期と重なる。スマートフォンは、単に技術的に進歩した携帯電話として、過去のさまざまな製品を駆逐しただけの製品ではない。スマートフォン、そしてスマートフォンを通じて多くのアプリケーションがクラウドに移り、消費者のライフスタイルを一変させた。
ところが、スマートフォンによる革命も、もやは一段落しようとしている。“最新スマートフォンが最前線の技術トレンド”などと言えば失笑を受けることだろう。もはやスマートフォンは社会の一部、インフラと言っていいほど定着しているからだ。
こうした環境の変化に伴い、国内では楽天の携帯電話事業参入など目先の変化もあるが、社会全体を変えていくような大きなイノベーションはおそらく5G導入のタイミングになるだろう。なるべく早く、5G普及後に登場してくるだろう新しいサービス、デバイス、それらを活用したアプリケーションを見据え、足元の事業やそこから広がる新規事業へと目を向けねばならない。
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