KDDIは、なぜ社長交代を1年前倒しするのか 技術からサービスへのトレンド変化を象徴

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
1月31日、KDDIは4月1日付で社長が交代することを発表(写真:KDDI)

1月31日、KDDIは田中孝司社長が中期計画を1年残す形で会長に退き、4月1日付で高橋誠副社長に社長の座を譲ることを明らかにした。記者会見では、1年を残して自ら社長を降り高橋氏を後任候補として指名委員会に委ねたことについて、以下のような理由を説明した。

1つは、「中期計画を1年残した段階で交代することで、次の中期計画に向けて高橋新社長が熟考できる時間的な余裕を与えた」ということ。もう1つは、「現状で取り組めることに関してはやり切った」との理由だ。

いずれも「定番」といえる応答だが、携帯電話事業の長期的な投資トレンドから考えても、実によいタイミングでのトップ交代だ。

どこか寂しさを感じているような印象だった

2017年9月、アップルがiPhone Xが発表した際、田中社長は筆者の取材に対し、「技術的な話題や、将来の社会の変化などのメガトレンドを考える場合、5Gは欠かせないテーマ。しかし、携帯電話事業者側の視点でみると、5Gはまだ少し遠いところにある。その前に低消費電力、低コストのLTE技術(LPWA:Low Power Wide Areaのこと)などが来たうえで、その先に5Gが来るイメージだろう」と話した。

社長就任以来、「マルチユース 」「マルチネットワーク」「マルチデバイス」の3M戦略を進めてきたが、やれることはすべて実施済み。さらに次の大きな目標となるとネットワークの5G対応がある。が、それらはもう少し先の話、というわけだ。5Gでは自動車や流通向け自動運搬のシステムや、個人向けのモビリティなど、移動体も含めて社会全体がネットワークでつながっていくが、時期的には少し先の目標となる。

誤解を生む可能性を承知のうえでインタビュー当時の様子を表現すると、どこか「もうやることがないなぁ」という寂しさを感じているような印象だった。昔からパソコンや小型携帯端末が個人的な趣味としても大好きで、自社端末の1つひとつをプライベートでも使いながら、これはこんな端末、これはこんな使い方が面白いと、自社で扱っている製品を楽しんでいた田中氏が、そうした空気を出すことは珍しい。

次ページ金融や電子商取引、ヘルスケアにも取り組む
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事