人間の直感は得てしてみんな「裏切り者」だ 良きデータサイエンスは驚くほど直感的

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祖母には悪いが、データサイエンスは彼女の誤りを示唆している。最近、データサイエンティストのチームが、人類が集めた最大のデータセットであるフェイスブック上の人間関係を解析した。ある時点で「交際中」の関係にあった膨大な数のカップルを調べると、一部はその後も「交際中」を保っていたが、交際ステータスを「独身」に戻した人たちもいた。

そして研究の結論は、共通の友人を持つことは関係が長続きしないことの強力な予兆になることだった。おそらくパートナーや同じ少人数の人々と夜ごとつるむことは、あまり良いことではないのだろう。それぞれが別の社交集団を持つほうが関係を長続きさせるのだ。

ご承知のとおり、コンピュータなしに直感頼りでやってすばらしい結果が得られることもある。だがそれが大きな間違いを生むこともある。祖母はおそらく、人は自らの経験を買いかぶる傾向があるという認識の罠(わな)にはまったのだ。データサイエンスの用語ではデータに「加重(ウェート)する」と言うが、人は自分というデータポイントに過大な加重をするのだ。

人は印象的な物語を買いかぶる傾向がある

祖母は祖父やその友人たちとおしゃべりに興じた夕べを懐かしむあまり、いつも同じ少人数の友人たちとつるんでは口論が絶えず離婚に至った義兄夫婦を忘れてしまった。また自分の娘夫婦(私の両親)のことも失念していた。私の両親は別々に夜を過ごすことがよくあった。父は友人とジャズクラブや野球観戦によく出掛けたし、母は友人と連れ立って食事や映画に出掛けたが、今も仲睦まじい夫婦である。

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直感頼りだと、劇的なことに引きつけられるという人間の基本的な特性にもだまされがちだ。人は印象的な物語を買いかぶる傾向がある。たとえば、調査ではつねに、喘息よりも竜巻が一般的な死因として上位に挙げられるが 、実際には喘息のほうが70倍も人を殺している。喘息による死は目立たないし、ニュースにならない。竜巻で人が死んだときはその逆だ。

要するに、自分の見聞に頼り切っていては、世の中のありようを見誤るのだ。良きデータサイエンスの方法は得てして直感的だが、結果は往々にして反直感的である。データサイエンスはパターンを見いだし理解するという人間の自然で直感的な方法を大幅に増強し、まったく意外な実相を見せてくれることがある。

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