カフェで起業して10年続けられる人の仕事観 「基本」を進化させ、お客を裏切らない
「長年勤めてくださる主婦パートの方です。主婦目線で食材の効果的な応用や冷凍保存の仕方などを実践してくださいます。開業後は、スタッフたちからも学びました」(同)
理念から外れて「失敗」した
今回紹介した2人には「失敗経験」があり、理念を見失った時期もある。

現在は「タカシサイトウギャラリー」という齋藤氏のギャラリー名は、当初は「天狗」だった。「ギャラリー開業は23歳の時で、深く考えず、勢いでつけてしまいました。サザコーヒーの鈴木会長に、『お客さんからは“天狗”になっていると思われるので、変えたほうがいい』と言われたこともあります」と齋藤氏は頭をかく。
さらに28歳でカフェ開業後、酒類を提供したことも失敗だったという。
「店の開業費用で借入金があり、早く返済しようとコーヒーと同時にお酒を提供し、当時は深夜1時まで営業しました。酒類の勉強も必要で、つまみメニュー開発にも追われる。コーヒーも追究できませんでした。選択と集中で、酒提供をやめたのです」(同)
満留氏は、不本意だったごはんモノを提供した。
「開業直後、やりたくなかったカレーライスを提供しました。お客さまから『ごはんモノがない』と言われ続けたからです。提供を始めると、朝から仕込むカレーで時間に追われる割に、売り上げも伸びませんでした。現在はパンメニュー中心にしています」
明確な理念を掲げたのに、そこから外れて失敗するケースは多くの活動でもある。ただし、それを当事者でない外野が安易に批判するのは控えたい。「理念は大切だが、理念だけではメシは食えない」とも言われるからだ。
本当に大切なのは、「失敗から何を学び、どう方向転換につなげたか」だろう。この2店に共通するのは、軸足を定めて走りながら修正した点だ。そして店の活動を、引いた視点で見つめ直した結果、現時点で17年と10年の歳月を刻んだ。かつて「継続は力ではなく“宝”」――と話した経営者がいたが、まずはこの言葉を送りたい。
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