「自閉スペクトラム症」の人を取り巻く困難さ 極端にこだわる、空気が読めない…

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10代女子大生のEさんは、他人の心情を想像するのが苦手です。そのため自分が“わからないこと”を質問すると、かなりの頻度で相手に誤解されてしまいます。相手を責められているような気持ちにしたり、相手が怒り出したりするのです。それでもただ単にわからないから聞いているだけなので、なぜ誤解されてしまうのか、わからないのです。

20代男性会社員のRさんは、子どもの頃から人間関係が苦手で、トラブルになることが多々ありました。自分は間違ったことを言っていない、と思っても、相手が怒り出すというのです。これまでの経験から、自分が主張を曲げないことで相手を怒らせることが多かった、と自覚をしているので気をつけているのですが、社会人になってからもトラブルが続いています。弟がASDという先輩の勧めで、私のところに受診しにきました。

このように多くの人が持っている特性だとしても、ASDの人はその度合いが強いために問題となってしまい、生きづらさを感じているのです。

誤解を解いていくことが”生きづらさ”を解消するカギ

大人のASDの人の生きづらさの原因の1つは、周囲の人たちから「誤解され続けている」ということです。

彼らは、事実とは異なる誤った理解に基づいて、実際よりもネガティブな評価を下される可能性が高い状況にあります。筆者は、周りの人が彼らに対して冷淡な視線を向けたり、素っ気ない態度を取ったり、面倒くさそうな口調になってしまうのではないかと心配になることがあります。

彼らは幼い頃から、接する人のほとんどから誤解を受け続けていることも少なくないため、生きづらいと感じたとしても、なんら不思議ではありません。

これは、なにもASDの人だけの問題ではありません。周囲の人にとっても、大きなストレスになります。事情がなんであれ、人にネガティブな態度で接し続けることは、不快な気持ちになるからです。これも、生きづらい状態に違いないのです。

お互いの生きづらさを解消するために、できるだけ誤解を解いていくことが必要です。つまり、お互いをより適切に理解していくことが大切です。

ASDは生来の「特性」であるため、本人の努力が足りなかったり、親のしつけが悪かったわけではありません。このことが十分に理解できたとしても、不快な気持ちにさせられると、お互いに理解するのは不可能、と思われる方も少なくないでしょう。その気持ちは、よくわかります。

それでも私は、コミュニケーションを取る前からあきらめることなく、繰り返しコミュニケーションを取ってほしい、と願わずにはいられません。その積み重ねによって、想像もできなかったほどよい状況になっていくことがあるからです。

ASDの特性は、ネガティブなものばかりではありません。特定の分野では、ほかの多くの人が到底及ばないほどの高い能力を発揮し、偉業を成し遂げる人も珍しくないのは、広く知られている事実です。

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