フランスは「使用済みオムツ」を持ち帰らない 日本の保育園とは何が違うのか
このように客観的・具体的な目安を示さない行政の姿勢に疑問に感じる事業者もいる。オムツを園内廃棄する関東地方のある私立認可園の園長は、以下のように話す。
「『ガイドライン出したから、各園で勉強してマニュアル作ってね』という姿勢そのものが、責任逃れをする国の体質の現れのように思えます」
「使用済みオムツに関しても、自治体の回収頻度では保管に困り、処理を民間業者に依頼すれば園の出費になる。そこでオムツの持ち帰りをルールにするところが多いのだと思いますが、衛生上はありえません。個人的には、その園の衛生管理を信用できないレベルです」
紙オムツは園内廃棄、フランスの「予防原則」とは
一方のフランスでも、オムツの処理に明確な法令や指針があるわけではないが、紙オムツは園内廃棄がスタンダードだ。
その背景には、園内廃棄を選ばざるを得ない保育行政の大前提がある。国の社会福祉・家族法112条3項で定められた「予防原則」だ。
フランスにある限り、保育所にも保育所を認可する医療機関にも、この「予防原則」に従った判断・行動が求められるのである。そこには、児童の保護のために国は「子どもとその親の益となる予防活動を行わねばならない」と明記されている。
フランスで保健行政のトップにある「連帯・保健省」の担当者は、こう説明する。
これは保育所内の安全・衛生管理に限らず、虐待や違法行為にも及びます。保育所運営のあらゆる環境整備やルールは、"予防"の点で適切か否か、で判断されることになっているのです。
使用済みオムツは「一般ゴミ」と規定され、自治体は他のゴミと同様、回収しなければならない。「感染症予防」の観点で正しく廃棄されるよう、指針でゴミ箱の種類やトイレの備品を定めている、というわけだ。
2017年12月の記事で紹介したように、フランスの保育園は「保育士の働きやすさ」を重視し、業務を合理化している。そこに予防原則を合わせて、設備面での細かい目安を示すことで、トイレ・オムツ周りの環境や運用の統一を図っているのだ。
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