なぜ現役自衛官は「国会で答弁」できないのか 石破茂×丹羽宇一郎対談<後編>

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丹羽:国際政治を見ても長期政権は腐るんです。人間、どんなに立派でも、やっぱり権力というものは長く持つと自ずと腐っていくんです。これは現在の日本の政治も、習近平も、ウラジーミル・プーチンも、みんな一緒です。

石破:そうでしょうね。金正恩に何か意見したら次の日はその人はいないのでしょうから。

丹羽宇一郎(にわ ういちろう)/元伊藤忠商事社長・元中国大使。1939年、愛知県生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。1998年、社長に就任。1999年、約4000億円の不良資産を一括処理し、翌年度の決算で同社史上最高益(当時)を記録。2004年、会長に就任。内閣府経済財政諮問会議議員、内閣府地方分権改革推進委員会委員長、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画(WFP)協会会長などを歴任し、2010年、民間出身では初の中国大使に就任。現在、公益社団法人日本中国友好協会会長、早稲田大学特命教授、福井県立大学客員教授、伊藤忠商事名誉理事(撮影:梅谷秀司)

丹羽:諫言の士がいないんですね。それが独裁政権が続いていく柱になっているんでしょう。そういう中で、諫言の士というのはなかなか出てきません。首になるか、死を覚悟しなきゃいけない。

石破:そうですね。

丹羽:それは個人個人の人間性の問題じゃなくて、やはり組織というものは、必ずそうなっていくというのが過去の歴史ですから。この人は賢明だとか、謙虚だとかというのを超えているんです。大体みんなそうなるんです。やむをえない。だから、アメリカは4年ごとに選挙をやりなさいとなっている。あるいは習近平も、やっぱり10年だということでやっている。あれを15年にするようだったら、これは大変です。中国は確実に壊れますよ。

石破:会社の会長さんとか、社長さんとかでも一緒だと思います。私はそんな偉い人になったことはないのですけれども、防衛庁長官のときも、防衛大臣のときも、農林大臣のときも、地方創生大臣のときも、秘書官は「大臣、それは間違いです」と言ってくれる人でした。

丹羽:それは正しい。権力は腐りますからね。

石破:防衛庁長官や防衛大臣には、秘書官と同時に、制服組の副官というのがつくんです。2等陸・海・空佐――昔でいう中佐、そのクラスがつくんですけれども、こういう人たちにも、「大臣、それは間違いです」と言ってくれる人をお願いしました。

最先端の軍事技術への備えはあるか

丹羽:原子力発電所に、普通の爆弾でもいいんですが、ミサイルを撃ち込まれたら大変な被害が出ると思うんですが、対策は十分なんでしょうか。

石破:原子力発電所は、ジャンボジェットが直接落ちても大丈夫なくらいの耐久性を持たせてつくってあるそうです。ですが、物理的な破壊力には当然耐えうる限界というのがありますし、そもそもわが国領土にミサイル攻撃ということであれば当然、ミサイル防衛システムが機能しますから、イージス艦で撃ち落とし、撃ち落とし損ねた場合には地上からパトリオット迎撃システムで落とすということになります。

丹羽:電磁波の攻撃とか、あるいはサイバーアタックとか、こちらのほうが核兵器よりも抑止力になるのではないか。というような議論もあるんですが、その辺はどうお考えですか。

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