なぜ現役自衛官は「国会で答弁」できないのか 石破茂×丹羽宇一郎対談<後編>
石破茂(以下、石破):私は1回しか北朝鮮に行ったことはありません。今から25年前、まだ拉致問題も表に出ていなかったし、核実験も、ミサイル実験もしていない。
そんな時代に、金日成主席の80歳の生誕記念日ということで、自民党、社会党、公明党の3党で祝賀団を編成したことがありました。私はお祝いする気がないにもかかわらず、一度見たくて行ったんです。
私も感性の鈍い人間ですが、あんなに驚いたことはない。大スタジアムでマスゲームをやる。ストーリーは、日本兵が朝鮮の人たちをいじめている。そこへ白馬にまたがった金日成主席がさっそうと登場して、日本兵を撃ち殺す。夜は夜で、オペラ大会でまったく同じストーリー。徹頭徹尾、反日です。これで国民が反日にならないはずはない。
丹羽宇一郎(以下、丹羽):中国でもごく最近まで、日本兵をやっつけた、中国共産党バンザイとやっていたのとあまり変わらないですね。
石破:たぶん一緒だと思います。徹底した反日と個人崇拝で、国民をマインドコントロールしている。この国は怖いなと思って、私はそこから本格的に防衛や安全保障の仕事を始めたんです。
ロシアの国防大臣が分析した北朝鮮
石破:防衛庁長官の頃、当時のロシアのセルゲイ・イワノフ国防大臣と2人で話をしていて、なぜソ連は崩壊したかと尋ねたことがあります。イワノフ大臣は、「それは国民が、アメリカは自由だ、日本は豊かだ、クレムリンの言うことはみんなうそだと知ってしまったからだ。国民に本当のことを教えると独裁政権は倒れるものだ」と。
さらに、「ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権が倒れたときは軍によって大統領夫妻が銃殺された。つまり、独裁政権は軍を大事にしなくても倒れる。イラクのサダム・フセイン政権が倒れたのは、核を持たなかったからだ」と。
まだ金正日時代でしたので「あの金正日は、それを全部学んでいるから倒れないぞ」と、こう言われたのをよく憶えています。
丹羽:金正恩も3代目として、2代目までの思想を受け継いでいるんでしょうね。
石破:そう考えるほうが普通じゃないでしょうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら