自衛隊の電磁波攻撃対策は本当に「ない」のか 海上自衛隊は対策済み、実は古くから議論
北朝鮮が9月3日に行った6回目の核実験以降、日本で「電磁パルス攻撃」という言葉が注目されるようになった。にわかにこの攻撃への対策が叫ばれるようになったが、これはどのような被害と影響を与えるのか。
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」9月3日付は核実験が成功したことを報道、その中で「戦略的目的によって高空で爆発させて広大な地域に対する超強力EMP攻撃まで加えられる」と発表している。EMPは電磁パルス、ElectroMagnetic Pulseの略。これを発生させる方法としては、高度30キロメートル以上の高高度で核爆発を起こし、そこから放出されるガンマ線によってEMPを発生させるものと、強力なEMPを発生するミサイルや爆弾を爆発させるものとがある。
北朝鮮にとっては、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射させて狙ったところに着弾させるまでの技術よりも、ただ高高度に飛ばすミサイル技術でEMP弾頭を爆発させる方法がより簡単だ。すでにICBMを飛ばす技術は持っているので、EMP攻撃の可能性にも言及したのだろう。3日付の「労働新聞」には、「朝鮮労働党の戦略的意図に合わせて」など、「戦略的」という言葉が使われている。これは「核攻撃においていろんなオプションを持っているのだ」と誇示したいがための修辞だ。
EMPは社会基盤・インフラの運用を狂わせる
EMP攻撃はコンピュータや通信機などの電子機器を破壊し、敵の作戦能力をマヒさせることが最大の目的だ。人体への影響としては熱や電流を身体に受ける可能性があるが、原子爆弾のように相対的に低空で爆発するものではないため、死に至るほどの被害はないとされる。
とはいえ、すでに社会基盤・インフラの運用に使われているコンピュータなどの電子機器をEMPが破壊してしまうため、大規模な被害が生じ社会的に大混乱する可能性があることが最大の懸念となっている。実際に1958年、米国が太平洋中部のジョンストン島の上空約76キロメートルで核弾頭を爆発させた際、約1500キロメートル離れたハワイの家庭や工場のヒューズやブレーカーが切れて大停電が発生したことがある。
北朝鮮がEMP攻撃に言及すると、菅義偉官房長官は「万が一の事態への備えとして、国民生活の影響を最小限にするための努力が必要だ。対応策を検討したい」と述べた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら