自衛隊の電磁波攻撃対策は本当に「ない」のか 海上自衛隊は対策済み、実は古くから議論

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また、米国のロナルド・レーガン大統領が「スターウォーズ構想」と呼ぶ戦略防衛構想(SDI)を発表し、これを契機に冷戦が激化した1980年代前半には、弾道ミサイル防衛(BMD)の必要性が騒がれ、この時期にもEMP攻撃と対策が議論された。イージス艦によるミサイル発射によって大気圏外で敵のミサイルを爆破するという現在のBMDとは違い、当時は発射されたミサイルを成層圏内で核爆発の威力によって除去することが想定され、その際に発生するEMPによる被害が懸念された。当時、日本でも国会で取り上げられたことがある。

1980年代にすでに対策は存在していた

1986年11月6日の衆議院予算委員会で、故・楢崎弥之助議員(社会民主連合)がEMP攻撃を取り上げ、対策などについて政府に質問している。EMP攻撃が「今米国の猛烈な関心事になっている」とし、1984年に北米防空司令部と空軍基地を結ぶ光通信装置を日本電気が納入した事実を、EMP対策で購入したのだと紹介、自衛隊の対策はどうなっているのだと追及した。さらに楢崎議員は、海上自衛隊第2術科学校(神奈川県横須賀市、機関科関係、情報、外国語等の教育訓練を行う)で使われている教科書に、対策が書いてあることにまで言及している。

これに対し、防衛庁防衛局長(当時)だった西廣整輝氏(故人、元防衛事務次官)は、「現在特段に私ども十分な知識があるわけでもないし、その対策を特にとっておるということではございません」と答弁している。また中曽根康弘首相も「電磁パルスの問題については私も前に聞いたことがありまして、個人的には多少勉強もしてみたことがあります。研究課題でもある」と発言している。

小野寺五典防衛相は9月7日、記者会見で「電磁パルスによる攻撃でどのような影響が出るのか知見が確定しているわけではない」と発言した。少なくとも30年以上前から対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、自衛隊は何もしていなかったということか。防衛省は2018年度予算の概算要求で電磁パルス攻撃対策として14億円を計上、電磁パルス弾の試作や防護技術を研究するという。

核を使った攻撃は威力は最大だが、その技術は古い。同盟国の米国では対策がなされ、米国と共同行動をとる海上自衛隊でも対策がなされているというならば、小野寺防衛相の発言はどのような意味なのか。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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