「カレーを1からつくる」とはどういうことか 米も野菜も肉も食器もつくってみた
カレーライスを一から作る。そう聞けば「ふむふむ、市販のルーを使わずに、スパイスをアレンジするのかな」と、まずは思うのが普通のリアクション。で、隠し味とか一手間とか、なにか工夫やアイディアがあって、と。実際「カレーライスをつくる」「カレーライスを語る」という本は数多ある。なにしろ国民食。美味しく作るために、どれほど多くの人々が、どれほど多くの情熱を傾けてきたことか。
しかしこの本『カレーライスを一から作る』はそうではないのだ。表紙に小さく書いてある「関野吉晴ゼミ」の文字に気づけば、ただのカレーライス本ではないことがわかるだろう。
関野吉晴さんといえば、人類の足跡をたどる旅・グレートジャーニー! 1995年から2002年までフジテレビで不定期放送されていた紀行ドキュメンタリーで、世界中を飛び回っていた探検家である。植村直己冒険賞受賞、人類学者であると同時に外科医でもある。この日本が誇る探検家がカレーライスをどうしたって?
徹底的に「一から」作る
じつは関野さん、現在、武蔵野美術大学で教鞭をとっておられるのだ。文化人類学・人類史を教えている。この本は、関野教授が学生たちとともに、9ヶ月かかってカレーライスを一から作るというゼミの記録である。なにしろ関野教授なので、市販のルーがどうのこうのというような「一から」ではない。徹底的に一から。つまり、ライス=米を育てる。人参だのジャガイモだのスパイスだのも植えて育てる。塩も海水から作ります。
「君は何カレーが食べたいの?」ビーフ or チキン?である。もしビーフと言ってしまったら、牛をどこかで産んでもらって、それを育てなければならないところだったが、学生たちが選んだ「肉」はなんとダチョウ! もちろん産まれたての雛から育てる。
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