「カレーを1からつくる」とはどういうことか 米も野菜も肉も食器もつくってみた

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カレーライスはどうやって食べますか? 普通は皿に盛り、スプーンで食べます。ならば皿もスプーンも一から作ります。

私たちは日々、何かしらを食べている。しかし、そこそこ自炊をしているつもりでも、実際に自分が手をかけている部分は、実は最後の最後のほんのちょっとのことなのだ。たった一皿のカレーライスが私たちの胃の腑に収まるまで、あらゆる食材がどこでどんな道のりを経てくるか、考えたこともない。それをやってみようというのだ。目標は9ヶ月後。うまいカレーライスを食う!

人参担当の学生の悩み

さてさて、学生たちの奮闘が始まる。

人参担当の学生の悩み。化学肥料は使わないで土の力のみで育てるのがルールなのだが、なかなかうまくいかない。プロの農家に教えを乞えばうまく肥料を使って立派な収穫を得られることをまざまざと見せられ、自分が何を求めているのか迷い始めてしまい…

米作りも無農薬で、すべて手作業で行う。除草剤も使わない。と簡単にいうが、これがとんでも無く大変なのだ。およそテニスコートくらいの田んぼに、一本一本苗を植え、雑草をこれまた一本一本抜く。ヒエは稲とよく似ていて、うっかりすると引き抜いてしまう。だから神経張り詰めっぱなし。腰も痛いよ。

皿は「土器」である。土をこねて、野焼きで焼く。もっとも原始的な方法である。がキャンパス内で野焼き、などといったら許可が下りないのではないかと危惧した関野教授は「焚き火」で届け出たものの炎は思いの外立ち登り、警備員が駆けつけて、さあどうなる! 土器土器!

しかし、もっとも精神的ハードルが高いのはやはりタンパク源の確保である。命を育て、それを屠る。命は簡単には育たない。命とはこんなにも脆いものなのか。素人集団はダチョウを育てきれず、雛は次々死んでいく。なんとか大きくしなくてはと一生懸命になれば、それゆえに情が湧いてしまい食べることへの迷いが出る。鳥の雛ときたら、よちよち歩いてかわいいし、肩に乗ってきたりするのである。「大事に育てる」ってどういうことなのか。ペットと家畜はほんとに違うの?

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