熊本の温泉街でイタリア料理店が繁盛のワケ 菊池市のUターン転職組が成功させた農と食

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亀川さんが移住した2012年は、東日本大震災をきっかけに関東圏からのIターン移住者が一気に増えた年だった。だが今では、「所得の低さなど経済的な理由から、当時移住した人の半分以上が近隣の都市部に転居したり関東に戻っている」(亀川さん)。

亀川さんは、「ただ移住したいと思って熊本県菊池市に来たわけではなく、昔から関心があった食に関する仕事、農業をやりたいと思って移住したので、経済的に大変でも気持ちがぶれなかった」と話す。

地方にはない教育や雇用環境などを求めて福岡、大阪、東京など都市部に移住したものの、結婚や子育てなどライフスタイルの変化によって、生まれ育った自然環境の価値をあらためて発見し、Uターン転職したいと考える地方出身者は多い。ただ、就職先がなく、都市部ほどの給与も見込めず二の足を踏むのが現実だろう。

実際、「物価が安いから生活費を抑えられると思っていたが、公共料金や生活用品の価格は都市部とそれほどの違いはない」というのがIターンした亀川さんの実感だ。

地方は稼げないという常識を覆せるか

もちろん、毎月の家賃は安くなり、土地代も安いことからマイホームを建てることは夢ではなくなる。前出の今坂さんは「東京都内の賃貸マンションでは、下の階に住む人に配慮して子どもたちに静かに歩くようにといつも注意しなければならなかった。今は元気に走り回っていても笑顔で見守ることができる」と、地方暮らしのメリットを感じている。

また、都市部でさまざまなキャリアを積んだ人材の地方でのニーズは高い。前出の熊本県菊池市のUターン、Iターン転職した人々のように、「何を作れば売れるか」「何を必要としているか」など、人口が多く消費都市である東京や大阪で身に付けたマーケット感覚を生かせるからだ。

これは、地元でのビジネス経験しかない人々の中では、かなりのアドバンテージだ。都市部で経験を積み、地方に戻ってその経験を武器にビジネスをすれば、「地方は都市部ほど稼げない」を覆せるかもしれない。熊本県菊池市の新規就農の動きには、そんな新たな可能性がある。

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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