熊本の温泉街でイタリア料理店が繁盛のワケ

菊池市のUターン転職組が成功させた農と食

菊池さんは、高校まで熊本県菊池市で過ごし、大阪に移り住んで料理の専門学校に通った。卒業後は関西圏でフランス料理店、イタリア料理店、ホテル内レストラン、レストランバー、カフェなどさまざまなジャンルの飲食店を9年間ほど渡り歩き、熊本にUターンした。

地元に戻ると実家近くの商店街は、地方の例に漏れずシャッター街になっていた。「もう一度、人が集まる場所にしたい」――。40歳にして、いつかは持ちたいと常々考えていた自分の店を開店するに当たって、場所は地元の菊池市以外にないと思った。

こだわりの飼料を使った豚肉、自然栽培の米、無農薬の旬の野菜など、季節ごと、その日ごとに手に入った食材でメニューを決める。「不自然なことはしたくない」から、イタリア料理の定番食材とはいえ、真冬にはズッキーニ、ナスは使わず、トマトも手に入らなければ使わない。代わりに旬のごぼう、かぶ、大根を使った料理を提供する。

食材にこだわると原価率は上がる。一般的に飲食店の原価率の平均が30%前後とされる中でコントルノ食堂は50%超。「60%超になることもあって、経営的には厳しいときもある」(菊池さん)。

前菜からメイン、デザートまでのコース料理を頼み、「熊本ワイン」のボトルを注文すると1人当たり料金は1万円ほど。地方の物価を考えると決して安くはないが、コントルノ食堂で料理を食べるために菊池温泉を訪れ旅館に宿泊するというファンもいる。

「大事なのは原価よりコスパ」

「ナポリピッツア研究所 イルフォルノドーロ」の自社工場で手作りするモッツァレラチーズは、全国のファンからネットで注文が入る(本人提供)

コントルノ食堂から南西に2キロメートルほどの場所には、「ナポリピッツア研究所 イルフォルノドーロ」がある。オーナーの原田将和さん(39歳)もまた、20代前半までは東京都内の飲食店で働き、2010年に店をオープンしたUターン組だ。

原田さんの場合、「自分がおいしいと感じる食材を求めたら、自然と地元食材を使うことが多くなった」と言う。

オープン当初はイタリア食材を輸入していたが、ある時届いた小麦粉が腐っていたことがあった。新鮮さを追求するなら熊本県産の小麦粉のほうが良い。今ではイタリア食材の定番、モッツァレラチーズも原田さんの親戚が作る牛乳を使い手作りするこだわりようだ。

特段、「無農薬」にこだわりがあるわけではないが、おいしいと感じるものを選んだら、地元の無農薬野菜を使うことが多くなっていった。

「大事なのは原価よりコスパ」だと原田さんは考えている。「あえて“無農薬”の野菜を使っていると謳わなくても客には伝わっている気がする。原価が高くなっても良いものを使えばおいしいと無意識で感じ、また訪れようと思ってくれるはず」(原田さん)。

理想論のように聞こえるかもしれないが、看板メニューのピッツァとモッツァレラチーズ目当ての客が、地元だけでなく県外からも引きも切らず訪れる事実が、原田さんの言葉を裏付けている。

Uターンだけではなく、神奈川県から移住し、大手電機メーカーのエンジニアから農家へと転身を果たした人もいる。亀川直之さん(45歳)は6年前、熊本県菊池市に移り住んだ。

この地を選んだのは「肥沃な土壌と豊富な水。農業をやるのに適した土地だった」(亀川さん)からだ。現在は、オクラ、インゲン、西洋野菜などを自然栽培し、ナチュラル・ハーモニーなど個人宅配向けをメインに販路を広げている。

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