芸能事務所アミューズ、スポーツ参入の勝算 陸上の桐生選手、マネジメント契約の舞台裏

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――アミューズが持つミュージシャンや俳優のマネジメントのノウハウは、スポーツプロジェクトにもつながるのでしょうか?

コンサートやファンクラブの運営、グッズ販売、テレビCM出演、ファンを増やすための発信の仕方など、アミューズはファンを熱狂させるためのノウハウを持っている。海外ではスポーツマネジメント大手の米IMG社が芸能プロダクションの米ウィリアム・モリス・エンデヴァー社に買収されて傘下に入るなど、エンターテインメントとスポーツのマネジメントが一緒になる流れもある。

ミュージシャンとアスリートの大きな違いは、おカネの流れ。ミュージシャンの場合はコンサートやCD、音楽配信の売り上げという形での一般のファンからの収益がメイン。それに対してアスリートの場合はチームや企業からの収益が多い。

だからこそ、スポーツではただメディアやテレビCMに出るというだけでなく、選手を通じてその企業の価値をどのように上げることができるかというプランニングが重要になる。

企業がどの顧客層をターゲットにしているかを見極めて、たとえば長距離走の大迫であれば、ランニングを愛好する層がどれくらいいて、どのくらいの所得層が多いのか、それに対してどうすれば効果的にリーチすることができるのかといったことをプランニングする。

その競技でメディアに露出するというだけではない価値をどうアピールしていくか。その選手を起用することで具体的にどのような数値が上がるかということを提案しないと、企業に納得してもらうことは難しい。企業側にとっても、ただそのスポーツが好きだから、応援したいからおカネを出すというのでは長続きしない。

勝ちパターンを伝えたい

――今後の展望は?

最近プロ化するスポーツが増えているが、プロになるだけではマーケットは増えていかない。プロ選手の数は増えるかもしれないが、スポーツ全体のマーケットが増えなければシェアの奪い合いになって1人ひとりの収入が減り、引退後のセカンドキャリアで困る選手が増える。そうなるとスポーツをやりたいという子どもが減るという悪循環になってしまう。

そうならないように、プロとアマチュアという極端な分け方ではなく、企業とアスリートの新しいつながり方、共存の仕方を作っていくことは日本のスポーツ界全体のミッションでもある。

その際にいちばん大事なのは選手。選手の価値が上がらないと、競技の価値、企業の価値は上がらない。では、選手が価値を上げるためにはどのような発言、行動をし、どういうプレーをすべきなのか。このようなところまで含めてマネジメントをしていきたい。

また、海外に出ていくアスリートはこれからも増えていくと思うし、自分自身が経験した「海外での勝ちパターン」をしっかり伝えていきながら、アスリートが引退後のキャリアも含めて、長い人生を通じて成功するためのサポートができればと考えている。

スポーツの魅力は言葉がなくても伝わるため、世界のどこでも通用する。アジアはこれから人口が増えていく成長市場であり、アジアのスポーツ選手を通じて欧米企業のアジア進出をサポートするということもできるかもしれない。

東京オリンピック以降は国内でのスポーツ人気の盛り上がりが一巡してしまう可能性もある。それまでにスポーツを通じた価値向上の仕組みをどう作るか。そして、オリンピック以降にどのような戦略を取るかも含めて、次の準備を進めている。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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