冬ドラマにジャニーズ主演が溢れかえる理由 強気の全方位営業はスゴいのかやりすぎか

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視聴率の不調のみならず、連ドラへの関心やイメージの低下が叫ばれる中、現状のような「芸能事務所が強気の営業で攻める」「テレビ局は迷いがありつつもそれを受け入れる」という関係性が続くのは、芸能事務所、俳優、テレビ局のすべてにとってマイナス。テレビ局にとって連ドラは「老若男女に見てもらってナンボ」だからこそ、「目の前の取引先(芸能事務所)ではなく、一般層の志向に寄り添ったキャスティングができるのか」が近未来の鍵を握っているのです。

アイドルに地上波の番組は厳しい時代

話をジャニーズ事務所のタレントに戻すと、今後、彼らが演技力や役柄へのフィット志向の強くなる一般層に受け入れられるためには、「主演ばかりでなく助演での出演を増やす」「作品やキャラクターに合う役柄を選んで出演」「主題歌や後輩タレントのバーター出演にこだわらない」などの柔軟な姿勢を見せることがポイントになるでしょう。

もともとジャニーズ事務所のタレントには熱心なファンが多く、イベントや物販に強いことで知られています。一方、地上波のテレビ番組全体が、「老若男女から、凄く好かれるよりも、嫌われないことが求められている」のは、もはや避けられない現実。その点、「ある層から熱狂的に支持される反面、それ以外の層から嫌われやすい」アイドルにとって地上波の番組は、必ずしも居心地のいい場所ではないでしょう。

彼らが最も輝くのは、有料客を集めたステージ上であることは周知の事実。熱狂的なファンを満足させて売上を確保しつつ、アンチを中心にした批判の声を避けるために、少しずつ映画や有料配信サービスへの出演が増えていくのではないでしょうか。

事実、岡田准一さん、二宮和也さん、生田斗真さんら「ジャニーズの演技派」と言われるタレントは、映画への出演を増やす一方、連ドラ主演を務めることはめったにありません。この方針は、「演技派としての評価を高め、批判や低視聴率でのイメージ悪化を避けている」ということ。ジャニーズ事務所は「利益を追う攻めの営業と、商品価値を保つ守りの営業を使い分ける」という戦略も持ち合わせているのです。

いろいろ書いてきましたが、少なくとも「ジャニーズ事務所が芸能界屈指の営業力を持っている」ことに疑いの余地はありません。同事務所に限らず芸能は、「見てくれる人あってこそ」のビジネスモデルだけに、各メディアへの強気の営業が正しいとは言えないですし、近い将来、方針転換があってもおかしくないでしょう。そのあたりの動向も含めて、「東洋経済オンライン」読者のビジネスパーソンにとっては参考になる会社のひとつなのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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