45歳女性がお見合いで「ベタ惚れ」されたワケ 「結婚願望はまったくなし」からの急展開

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2017年からようやく婚活を始めたのは2つ理由がある。1つは、年に1度だけ帰省して顔を合わせる両親が年老いて来たこと。親の死が間近になると自らの孤独を感じやすい。もう1つは、自己啓発的な理由だ。

「私は好き勝手に仕事して、土地にこだわらずにあちこちで暮らして来ました。あまりに自己完結をしてしまい、世界が狭くなっているように感じています。とりわけ結婚したいわけではないけれど、お付き合いの習い事をするつもりでスーペリアに入りました。相手は50代以降の男性ばかりだと念を押されましたが、私は相手の年齢は気にならないので問題ありません」

45歳という年齢はスーペリアの女性会員の下限だ。多くの男性は自分より若い女性に魅力を感じるものなので、敏子さんの選択は正しかったと言える。

猛プッシュに戸惑ったものの…

一回り年上の幸太郎さんによる猛プッシュに戸惑った。しかし、時間を置いてみるとデートの楽しさを思い出した。

「彼と一緒に過ごすことで、1人では立ち止まらないような場所で風景を見て、感想を共有できました。もう少し彼について行ってみようかな、と思えたんです」

最終的な決断は9月だった。新たな男性会員の紹介書が送られて来ても自分の気持ちが動かなかったら、幸太郎さんとちゃんとお付き合いしよう。そして、2人は正式に交際を始めスーペリアの退会を決めた。

「夜勤明けに彼女から承諾のメールをいただきました。本当に嬉しかったです」

声を震わせる幸太郎さん。感動が今でも続いているようだ。片道2時間の中距離恋愛であるが、週に1度は会っている。千葉の自宅に住み続けたい幸太郎さんはできれば敏子さんに来てほしいのだが、決して無理は言わない。敏子さんを立て、尊重する姿勢を崩さない。

「彼女は専門性の高い重要なお仕事をされています。就くまでの努力も並大抵ではないでしょう。大げさに言えば国の財産です。私の勝手で辞めていただくわけにはいきません」

数年おきに転職をしてきた敏子さんは、「仕事はたっぷりやって来たので一区切りつけてもいい」と明かす。千葉に転居したとしても専門性を生かせる仕事が見つかる自信もあるのだろう。幸太郎さんとの新生活を含めて、今までと違うことをやろうと思えればやれるのだ。

「ぜいたくな人生を過ごさせてもらっている。私は恵まれています」

控えめに語る敏子さん。好きな仕事に励み、いろんな土地で暮らした。すれ違いの多かった恋愛も40代半ばになって大きく実ろうとしている。そんな自分は恵まれていると感じる謙虚な心持ちが、敏子さんを内面から輝かせている気がする。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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