しかし、ほぼ条件通りの女性を紹介されてもピンと来ることはなかった。そして、8月に紹介されたのが神奈川県在住の敏子さんである。お互いの家を行き来しようと思ったら2時間以上かかってしまう距離だ。
「なぜこの人を私に紹介してくれるのか?と驚きました。ぶっちゃけで言うならば、お写真に魅力を感じました。若くて美しい方なので……。私なんかが申し込むとかえってご迷惑かな、絶対無理だよな、ほとんど犯罪だよな、とあきらめ半分だったのですが、返事をもらうことができたのです!」
最初のデート、すなわち2人だけのお見合いは1時間ほどお茶を飲んで解散するのがセオリーである。しかし、幸太郎さんはバブル経験世代の押しの強さを発揮する。敏子さんがお酒を飲めることを確認し、「もしよろしければ夕食も」と居酒屋に誘った。
「お互いに予定が合わず、次に会えるまでに20日ぐらい空いてしまうとわかったからです。セオリーどおりにやっていたら私などは忘れられてしまうでしょう」
幸太郎さんからの数千字に及ぶメール
会えない間はパソコンメールで文通をした。仕事で文章を書くことには慣れているという幸太郎さん。とりとめのないことを数千字も書いて送った。「何度も画面をスクロールしないと読めない」(敏子さん)ほどの量だ。幸いにも、電話よりもメールのほうが好きな敏子さんは喜んでくれ、丁寧な返信をもらうこともあった。
「メールでのやりとりで人柄がわかりますよね。彼女のメールは思いやりがあって、内面の美しさも伝わってきました」
幸太郎さん、ベタ惚れである。吉祥寺の井の頭公園でボートに乗る、ドライブ好きな敏子さんの運転で富士山へ、さらには千葉県銚子市の犬吠埼で夕陽を見る……。デートの予定を次々と入れた。しかし、あまりの急テンポに追いつけない敏子さんから待ったがかかる。当然だろう。先の予定をたくさん入れられると息が詰まってしまう。
東北出身で、全国各地を転々としながらキャリアを積んできた敏子さん。子どもには興味がなく、結婚願望も薄く、「結婚するなら夫婦別姓で別居婚がいい」などと公言して周囲を白けさせてきた。
「たまに恋愛することはありました。でも、私が好きになる人は振り向いてくれず、好意を示してくれる人には私の気が向かないことが多かったです」
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