一方の敏子さんは40歳を過ぎるまで「結婚願望はまったくなし」で気ままに生きていた。転職を繰り返しながら専門職としてのキャリアを積んできたし、読書やドライブなどの趣味もある。経済的にも精神的にも自立しており、幸太郎さんに守ってもらう必要はない。それを知りながらも幸太郎さんは「男の甲斐性」を示す。この世代ならではの心意気なのだろう。敏子さんは戸惑いながらも嬉しそうだ。
前妻との間にできた、埋めがたい溝
幸太郎さんには結婚歴がある。29歳のときに3歳下の同僚と職場結婚をした。息子と娘を1人ずつもうけたが、約20年前に仕事の担当分野で「想定外の事案」が発生。月に2、3日しか自宅に帰ることができない日々が続いた。職場のほぼ全員が忙殺される中、自分だけが定時で帰るわけにはいかなかった。
「当時、娘が生まれて間もない頃でした。子育てのケアをできなかったことが、(前の)妻とのすき間を大きくしてしまったのだと思います」
娘が中学生の頃、前妻は別居を提案。娘を連れて実家に戻ってしまった。なお、長男は高校卒業後に専門学校に進んで以来、1人暮らしをしている。
しかし、娘は祖父母と折り合いが悪く、高校に進学してからは幸太郎さんが1人で住む千葉県の自宅に戻って来た。生まれ育った土地なので友だちも多いのだ。
「やっぱり嬉しかったですね。弁当を作ってあげたりして、私なりに必死に子育てをしました。娘が高校に馴染めずに『死にたい』なんて口走ったこともあります。これはヤバいと思って妻にも相談したのですが、『そちらで引き取ったんだから責任転嫁しないで』と冷たく言われてしまいました。支えてくれたのは学校の先生方でした。本当に感謝しています。その出来事をきっかけにして妻とは離婚することに決めました」
娘が無事に高校を出て、短大も卒業して巣立って行ったのは2017年の春。公務員としてまだ現役で、アウトドアの趣味が多い幸太郎さんは特に寂しさは感じなかった。ただし、1人での旅先で仲良さそうな老夫婦を見かけると、「いいなあ」と思うこともあったと振り返る。
好奇心と行動力が旺盛な幸太郎さんは、「1年限定」で婚活をしてみることにした。どうせやるならば、きちんとやりたい。5月にスーペリアに入会し、担当者に希望条件を提出した。
「両親の墓を守りたいので自宅を離れることができません。できれば千葉県内にお住まいで、私と同じく離婚経験のある50代の方を希望しました。そのほうが話が合いやすいと思ったからです」
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