44歳「ホラー映画」を極める男の並外れた執念 「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」を生んだ発想

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そんなとき『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』の依頼が来る。

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』

それまでの作品よりもずっと予算が少ない作品だった。ほとんどが人件費で消えてしまう金額だ。

ただし、自由が与えられた。

「これは『伝説のシリーズ』にするしかないな、と思いました。伝説的な作品にならないなら、その予算で作る意味がない。自由に撮れるという部分を最大限に生かすことにしました」

普通の心霊モノのように始まるが、どんどん違う話になっていく。1作ごとに作品世界のルールが変わっていくという裏設定を作った。つまり映画のジャンルが変わっていくのだ。

見るたびにシリーズのイメージが更新されていく、そういう映画にしたかった。

「これは元をたどると『BE FREE!』(江川達也)の影響が強いですね。学園物ではじまったのに、アクション物になったり、宗教的な話になったり……章ごとにジャンルが変わるのがとても面白かったんです」

最初の契約は2本のみだったが、なんとか続編の製作が決まった。

回を重ねるごとに内容をエスカレートさせていった。

面白い映画を作りたいという「執念」

シリーズ初期はネット上にはほとんど反応がなかったが、3本目をリリースした後に反響が出始めた。

「ブログを見ると、私の作品をものすごくよく見てくれて、ものすごく理解してくれているファンの方がいました。そんなに自分の作品を理解してくれている人の言葉を目にするのは初めてで……。届いているな!!って思いました」

名古屋や北海道にて限定の劇場公開をしたりしてファンは増えていっていたが、劇的に知名度が上がったのは2014年だった。

「『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』が劇場公開されるのにちなんで、ニコニコ動画で過去の作品を無料で流したら、思った以上の数の人に見てもらえました。見てもらいさえすれば、わかってもらえるんだと実感してうれしかったです」

かつて、

「自分が面白いと思うものを、思うがままに作らせてもらえれば、きっとみんなが面白がってくれる作品になるのに……」

と悔しい思いをした白石監督だったが、数年後に思うがままに作った作品で多くの人の心をつかんだ。

面白い映画を作りたいという白石監督の“執念”がシリーズを伝説にしたのだろう。

そして現在もシリーズは続いている。

「完結編を作ろうとしているのですが、私がなかなか脚本が書けなくて……。もちろん作るつもりではあるんですが」

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