その後は日韓で公開された『ある優しき殺人者の記録』や、『リング』(中田秀夫監督)シリーズに登場する貞子と『呪怨』(清水崇監督)シリーズに登場する伽椰子が激突する『貞子vs伽椰子』など、話題作を監督している。
「人智を超えた異世界」がある世界が舞台
白石監督の作品を見ていると、登場人物や世界観につながりを感じる場合が多い。
意識してつなげているのだろうか?
「物語をリンクさせるのは、低予算で面白く見せていく方法の1つですね。視聴者がどこかでリンクに気づくと全部見たくなりますから。ただ無理やりつなげたりはしません。作っていてキャラクターの類似性に気づいたりしたときに、自然につながって面白いなと思えたらつなげてます」
白石監督は、幽霊を描くことにあまり興味がわかないという。「死んだ人間の呪い」というけれど、結局のところは人間にすぎないだろうと思う。
もっと人間を超越した力があったほうが面白い。
「私の作品は『人智を超えた異世界』がある世界を舞台にしています。
考え方としては、クトゥルー神話的なものが母体になっています」
クトゥルー神話とは、アメリカの作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが作品のモチーフとした「太古に地球を支配していたおそるべき力を持つ異形の神々」の話だ。
クトゥルー神話は、日本でも人気が高く、ゲームや漫画のモチーフにされる場合が多い。
たとえば『貞子vs伽椰子』の場合、貞子や伽椰子は幽霊に見えるが、白石監督のイメージの中では「異世界の霊的エネルギーに人間がイメージによって形を与えてしまった存在」ととらえている。
「クトゥルー神話はたしかに人気がありますが、クトゥルー神話をベースにホラー映画を撮っている人は日本では少ないんですよ。クトゥルー神話ってわかりづらいですから、プロデューサーに企画を通すのが難しいんです。
私の作品を見ている人には、同じ世界観の中で起こった話なんだな、と思ってもらえると思います」
新作『不能犯』も、公式には語られていないが、白石監督の中では白石ワールドにリンクさせている部分があるという。
白石監督は仕事の依頼が来なくなることに対する不安はあまりないという。仕事の依頼はなくならないという確信があるし、もしなくなっても自主製作で映画を撮ればいい。自主製作なら面白い映画が撮れるはずだから、そこから新しい映画を撮れるチャンスも必ず来るはずだと思っている。
映画監督としての身分や目先のおカネを追い求めるのではなく、“面白い作品”を作るという一点に執着する白石監督に好感が持てた。
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