鈴木宗男氏が展望する「北方領土問題の行方」 オリバー・ストーンのプーチン密着記を読む
べトナム戦争帰還兵であり、アメリカでもバーニー・サンダースなどの民主党の左にシンパシーを持つオリバー・ストーンがプーチン大統領に投げかけているのは、大国アメリカの過ちです。極東情勢についてこの本『オリバー・ストーン オン プーチン』では直接は触れられてはいません。
しかし、直接は語っていなくとも、日本との関係を考えるうえで示唆的な大統領のコメントが散在しています。本稿では、北方領土交渉に実際に携わり、プーチン大統領とも何度も会った日本の政治家として、そうした日ロ関係を考えるうえで重要な発言を読み解いていきたいと思います。
小渕総理からの特命を受けて
実はプーチンさんが大統領に当選して初めて会った外国の政治家は私でした。小渕恵三政権時代に私は小渕総理に呼ばれ、日ロ関係の特使としてロシアに行って新しく当選したプーチン大統領に会うことを厳命されました。2000年3月に行われた大統領選挙の9日後には、私はモスクワでその人と握手を交わしていたのです。
小渕さんが私に特命したのは長らく日本の悲願であった「北方領土」の交渉を進展させることでした。
「北方領土」は第2次世界大戦の前には日本の領土で日本人が住んでいた択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島のことで、私の選挙区である北海道の根室の北にあります。日本は1952年のサンフランシスコ平和条約でアメリカの占領下から独立を回復し各国と国交を結びましたが、このサンフランシスコ平和条約に当時のソ連は参加していませんでした。ソ連との間には1956年の日ソ共同宣言で国交が回復します。この時、ソ連が歯舞・色丹の二島を日本に引き渡すことでいったんは妥結しかかりますが、日本側が国後、択捉も含めた四島の返還を求めるようになったため、平和条約の締結には至りませんでした。共同宣言では、第9項で平和条約締結後に、歯舞・色丹が日本に返ってくるということが日ソ両国で確認されたのです。
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