鈴木宗男氏が展望する「北方領土問題の行方」 オリバー・ストーンのプーチン密着記を読む
2015年12月に私は安倍首相に呼ばれてこう言われました。
「来年は日ロをやりたい。ついては先生、協力してくれないか」
しかし、民主党が政権にいた時、私が党首を務める「新党大地」は民主党との選挙協力をしており、娘の鈴木貴子は民主党の議員でした。そのことを言うと、安倍総理は「心配しないでください。娘さんは自民党でしっかり育てます」と言ってくれました。私は民主党が共産党と全国的な選挙協力を始めていたことに筋の通らないものを感じていたことと、もう一度日ロのために働けるのならばということで安倍首相の話に納得したのでした。
「空白の10年」を経て、もう一度日ロ関係が動き出したのです。安倍政権は米国と違うスタンスでロシアと交渉する、しかも、交渉の基盤は森政権が枠組みをつくった経済協力をしながら、北方四島のことを考えていこうというものでした。
その交渉で、2016年の12月には、北方領土での共同経済活動をすることがまとまりました。読売新聞や日本経済新聞が二島返還か、三島返還かとあおって書いたものだから、期待値が上がってしまいましたが、この共同で経済活動をするということが合意できたということは大きな進歩なのです。
というのは、プーチンは1956年の日ソ共同宣言の認識に立っていることを認めているわけですから、平和条約が結べれば領土問題は解決する。平和条約の中に共同経済活動というのは含まれている。つまり平和条約への道が一歩進んだということなのです。
この本からまったく違う世界が見えてくる
米国とロシアの仲立ちという立場からの外交という意味では、北朝鮮の核問題もそうした外交方針が成功していると言っていいでしょう。あくまで話し合いをと主張していたロシアが国連での制裁決議に賛成したのは、2017年9月のウラジオストクでの安倍首相のプーチン大統領への説得が大きかったと私はみています。
『オリバー・ストーン オン プーチン』の面白いところは、西側の画一的な報道が描く「独裁者プーチン」とはまったく違うプーチン像が、プーチンの言葉を追っていくうちに浮かび上がっていくところです。私の逮捕に至るまでの報道もそうでしたが、米国一辺倒ではない、多角的な外交を本当に志すものは、西側では、さまざまな形でパージされていきます。それは官庁やマスコミの枢要な箇所が、アメリカ一辺倒の人々によって押さえられているからです。しかし、実は当事者であるプーチンの側から見える世界を素直に受け止めてみると、まったく違う道筋が見えてくるものなのです。
この本の基となったオリバー・ストーンのドキュメンタリーの評は、米国や英国では「独裁者の代弁者か」と厳しいものだったと聞きます。はたしてそうでしょうか? まずはプーチンの言葉に耳を傾けてみる。そうすると、日本にとっても違う世界が見えてくるはずです。
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