鈴木宗男氏が展望する「北方領土問題の行方」 オリバー・ストーンのプーチン密着記を読む

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プーチンは、イスラム原理主義の国際的テロ活動に早い時期から敏感でした。まだ首相だった1999年8月にニュージーランドのAPECで小渕・プーチン会談が行われますが、この時キルギスで日本人4人が人質になる事件が起きていました。その事件のことに小渕さんが触れた時に、プーチンは「私は犯人が誰かわかっている」とすぐさま反応したのです。

さらにチェチェンからダゲスタンに武装勢力が進出しているがどうなっているのか、という小渕さんの疑問にプーチンは身を乗り出し、「キルギスの日本人人質事件も根は一緒だ」と畳み掛けます。

つまり9・11でワールドトレードセンターが破壊されるはるか前から、プーチンはイスラム過激派の国際テロネットワークというものが脅威だということがわかっていて、西側に警告し、協力してテロ対策に当たるよう働きかけていたのです。米国はそうしたプーチンの主張に耳を傾けなかったことがこの本では語られていますが、日本の外務省も同じでした。チェチェン紛争に関してプーチン政権がチェチェンの独立運動を弾圧している、という欧米の認識を日本の立場として表明しようとしたのです。

その時の外務省総合外交政策局長が竹内行夫氏でした。私は「プーチンの言うことには客観的証拠がある」と厳しく問いただし、日本はロシアの内政問題としてチェチェンに干渉すべきではない、と主張しました。竹内氏は、後に小泉政権で外務事務次官になり、私の最高裁判決が出た際の最高裁判事ですが、この時、面子を潰されたと感じたのではないか。

しかし、いずれにせよ、あの時日本が米国や欧州に倣わず、「チェチェンはロシアの国内問題である」と言い続けたおかげで「北方領土交渉」は細々といえどもつながっていくわけです。

日本のチャンスはここにある

プーチンは反米であったわけではありません。この本の中でオリバー・ストーンが、9・11の後のアフガニスタンの戦争で、勢力圏下にある中央アジアの国々に米軍が駐留することをロシアが許したのはなぜか、と詰め寄っている箇所がありますが、あくまで反国際テロの戦線を米国と張っていこうということだったのでしょう。

当時私は、タジキスタンのエモマリ・ラフモノフ(現、エモマリ・ラフモン)大統領と親交があり、アフガニスタンで戦争が始まる前日に、会談をしたことがありました。そこでラフモノフは私に、米国に制空権を与え、基地の使用を認めると初めて明かしました。そのことを記者会見で私は話しますが、これはCNNが1日じゅうトップニュースで流すような大きなニュースでした。タジキスタンとしては、そのことを米国でもプーチンでもなく、日本の政治家の私に伝えることで米ロのバランスを取ったのです。

『オリバー・ストーン オン プーチン』でのプーチン大統領のインタビューの言葉を読みながら強く印象を受けるのは、チェチェン・ウクライナ・シリアと続く紛争で、アメリカとの関係が非常に難しくなったことです。しかしだからこそ私は日本にチャンスがあると考えています。

日本が米ロの仲立ちをしながら動き、一方で北方領土問題の解決に向けて前進をするという戦略です。

次ページ「空白の10年」を経て、もう一度動き出した日ロ関係
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