供給量が有限であるという希少性がビットコインの価値の源泉だという考え方には大きな問題がある。
金の場合には、仮に地球上の金を採掘し尽くしてしまっても、電子部品やコネクタなどに使うなど金属としての価値がなくなるということはないので、希少性があると言える。しかし、ビットコインはマイニング(採掘)と呼ばれる膨大な計算を伴う取引の検証作業を行う人が誰もいなくなってしまうと、システムが機能しなくなるので無価値になってしまう。発行量が上限の2100万ビットコインに達した後は、利用者が支払う取引手数料をマイナー(採掘者)が得ることがインセンティブとなってシステムは維持されることになっているが、実際にこれでシステムの維持ができるのかはその時になってみないとわからない。
発行の上限を取り払って、現在のようにマイナー(採掘者)が新規発行のビットコインを手に入れるという仕組みに変えることは不可能ではないと考える。しかし、中央銀行のように明確な権限をもった管理者がいない仮想通貨の仕組みでは、どのような手続きでこのような本質的変更を決めるのかということが大問題になるはずだ。
ビットコインによる支払いは普及するのか
ビットコインは割高なのかという疑問に対して、通常の通貨間の為替レートを考えるような方法で答えることはできない。例えば円とドルといった通貨が、相対的に割安か割高かを考える上で目安となるものに購買力平価がある。もちろんさまざまな要因が為替レートには働いているが、購買力平価から大きく乖離するという状況が長期に続くことは考え難い。しかし、ビットコインは現時点では現実の商品やサービス価格とのリンクがほとんどないので、このような通貨の購買力の比較ができない。
2010年5月22日にビットコインでピザが購入されたのが、実物取引でビットコインが使われたことの始まりとされている。この時には、ピザ2枚が1万ビットコインだったそうだ。その後ビットコインで支払いができる商品が増えているとはいっても、商品の価格がビットコイン建てで決まっていることはまれだ。ほとんどの場合には支払い額はピザ1枚の価格は何円というように既存の通貨建てで決まっていて、何ビットコインかが決まっているわけではない。ビットコインでの支払額がいくらになるのかは、その時々のビットコインの相場次第となっている。
現時点ではビットコインへの需要は、モノやサービスの支払いといった取引目的ではなく、価格の上昇を期待した投機的なものがほとんどだ。このためビットコインの価値は、投資家のセンチメント次第で大きく変動し非常に不安定だ。ビットコインによる支払いがもっと普及し、ビットコイン建ての価格表示が行われるようになって現実の商品との結び付きが強くなってくれば、ビットコインの価値はもっと安定したものになるだろう。
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