ゲイの父親とパートナーが教えてくれたこと 孫の卒業式で泣く「おじいちゃんズ」の愛情

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その席でうちの父親が、『オレはもう、一生こいつ(パートナー)と生きていくから!』みたいなことを言って、みんなハイハイ、みたいな。気持ちよくなって、言いたくなっちゃったんでしょうね(笑)」

晴子さんを通して語られるおじいちゃんズは、限りなく、いとおしく感じられます。

それにしても、晴子さんのお母さんもおじいちゃんズと一緒に食事をするというのは、なかなか驚きます。妻が、別れた夫やその恋人と交流するといった話は欧米の映画やドラマではよく見かけるものですが、日本ではまだあまり聞きません。

「うちの母親も、その後再婚したり、また離婚したりして、わりとそういうところがふっきれているんでしょうね(笑)。それに自分は病気がちで、うちの息子のことで身体的なサポートはできないから、おじいちゃんズがやってくれるのはすごくありがたいみたい。

面白かったのが、うちの息子が高校生のとき、かわいらしい女の先生に初恋をしたんですよ。それで『息子に好きな人ができたみたい』っておばあちゃんに報告したら、『男? 女!?』って。まずそこか!と(笑)。これは、わが家ならではの話ですね」

人間、好きになる相手が異性とは限らないことを、おばあちゃんは誰よりもよく理解しているのでしょう。

子どもの悩みを聞いてくれる人がいればよかった

晴子さんは、自分と同じような経験をした人が「実はほかにも、けっこういるはずだ」と考えています。

「うちの父親のパートナーもご結婚されていて、子どももいるんですよ。奥さんはもう亡くなっているんですけれど。そんなふうに、世間的に受け入れられやすいように異性と結婚して子どもをつくっているゲイの人って、いまもいると思うし、父くらいの世代の人はもっといると思うんです。

それで、数年前からツイッターで私と同じような立場の人を探し始めたのですが、なかなか会えなくて。会って話してみたいな、というのは、いまもどこかにあります。特にいちばん悩んでいた高校生の頃に、同じ境遇の人とつながれたらよかったですね。

自分1人ではもてあます、どう受け止めたらいいのかわからないようなことを、誰か聞いてくれる人がいたらよかったと思います。それでたとえば、『あなたは子どもの側なんだから、そういうことは自分で受け止めようとしないで、お父さんとお母さんにまかせたらいいのよ』みたいに言ってくれたらよかったな、って」

自分の話が役立つのであれば、と取材を引き受けてくれた晴子さんの思い。いまどこかで悩んでいる誰かに届きますよう。

本連載では、いろいろな環境で育った子どもの立場の方のお話をお待ちしております。詳細は個別に取材させていただきますので、こちらのフォームよりご連絡ください。
大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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