「でも私も、父にひどいことを言ってしまったことがあります。『みんながお父さんのこと、ホモだって言ってるよ!』って。当時はゲイなんていう言葉は使われていなくて、そういう差別語で言ってしまった。父親が、えらくぎょっとした顔をしたのを覚えています。
それは今でも、悪かったなぁと思います。自分も親になってみると、そう言われたらつらいと思うんですよ。親は『子どもにかわいそうなことをしちゃったな』って思うだろうな、と思うと、父親にそういう思いをさせてしまったことが、悪かったなぁって……」
子はどこまで親に対して愛情深いのか。晴子さんだけではありません。親の立場で話を聞いていて、どきっとするところです。
「実は今でも、父親のセクシャリティ(性的指向)についてちゃんと言葉で説明を受けたことはないんですよ。代わりに父親は、自分のパートナーシップのあり方を、日常的に見せてくれました。意図的にそうしたのか、たまたまそうなったのかわかりませんが、そういう形で、実質的な説明責任を果たしてくれたんです」
どういうことかというと、シングルマザーとなった晴子さんの子育てに、父親と今のパートナーが、全面的にかかわってくれた、というのです。
世間様が認める形でなくても幸せになれる
「私はふたりのことを“おじいちゃんズ”って呼んでいるんですけれど(笑)、おじいちゃんズがしょっちゅう、孫をみにきてくれたんです。私は息子が3歳くらいのときに離婚してひとり親になったので、すごくありがたかった。
家事を手伝ってくれたり、みんなでごはんを食べたり、息子をふたりで旅行に連れていってくれたり。息子もふたりのことが大好きで、いつも3人でくっついている。
そういうなかで自然と、ただのカップルとしてやっている父親たちをみていると、『いいな』と思うわけですよ。ふつうにパートナーなんです」
その感覚は、よくわかる気がします。私も初めて同性カップルと会ったときは、ちょっと不思議な感じがしたものですが、友達が増えて見慣れてくるうちに、なんとも思わなくなりました。
ひとり親の子育ては精神的にも体力的にもきついものですが、そこを助けてもらえたのは、どんなにありがたいことだったか。その救世主が妻×夫だろうが夫×夫だろうが、晴子さん親子にとっては何も変わりませんでした。
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