「自分の息子が“規格外”だったことも、父親のセクシャリティについて、あまり気にならなくなるきっかけになったかもしれません。
息子はダウン症で生まれて、いわゆる“ふつうの子ども”ではありません。“ふつう”以外のことを知らないと、『“ふつう”でないと不幸になっちゃうんじゃないか』というような、ステレオタイプな考え方をしてしまいますよね。私も、子どもが生まれるまではそうだったんですが。
だけど実際には全然そんなことはないとよくわかったんです。一緒に居るだけで薬になる、という意味の『居薬』っていう言葉を最近知ったのですが、うちの息子はまさにそれ。優しくて、本当にいい子で、めちゃくちゃ癒されるんです」
ダウン症の子どもがいる、と聞くと、おそらく「かわいそう」とか「大変」と思う人が多いでしょう。私も実は、そう思っていました。
その考えが変わったのは、以前このサイトでも紹介された本『ダウン症って不幸ですか?』(姫路まさのり著)を読んだことがきっかけでした。ダウン症は優しく穏やかな人が多く、家族はとても癒されるようです。晴子さんの話からも、その毎日のやわらかな空気が、じわじわと伝わってきました。
「だから私は、非常にハッピーなんです。息子は居薬だし、おじいちゃんズも子育てにコミットしてくれる。べつに世間様が認めるような形の家族でなくても、人間は幸せになれるし、何の問題もないとわかった。そういう価値観の変化も、大きかったかもしれないですね」
家族や人間の幸せは、形や属性で決まるものでない。ダウン症の息子さんとの暮らしや、おじいちゃんズとのかかわりのなかで、晴子さんははっきりと理解したのでした。
おじいちゃんズとおばあちゃんも一緒にお祝い
息子をかわいがって育ててくれるおじいちゃんズは、晴子さんにとって、「すごくほほえましい」存在でもあります。
「むちゃくちゃ仲が良くて、うちに来るときは必ず一緒なんです。父1人で来たことは、一度もない。
うちの父親が、彼氏の髪をずっと切ってあげているらしくて、しかもパートナーがそれを、恥ずかしそうに言うわけですよ。『いやぁ、〇〇ちゃんが切ってくれてるんだよね』って、照れながら。ごちそうさま!(笑)」
息子さんの卒業式に、おじいちゃんズが来てくれたときのエピソードも、とてもユニークです。
「そもそも特別支援校の卒業式って、ものすごく感動的なんですね。『ここまで大きくなってくれて本当にありがとう! 周りに幸せを与えてくれてありがとう!』という空気が、充満している。
そこにおじいちゃんズが参戦してくれたんですけれど、そうしたらもう、私以上にわんわん泣いて。年寄りだから涙もろいんですね(笑)。
そのあと、私とうちの息子と、おじいちゃんズと、うちの母親もあとから来て、みんなで食事をしました。おじいちゃんズはふたりともお酒が大好きなもんだから、べろべろになって、喜んじゃって、息子に『食えー、食えー』って。息子はかわいそうに、食べすぎて気持ち悪くなっちゃった(笑)。
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