31歳「パソコン改造を極める男」が創る稼ぎ方 世界で優勝しても食べていけない道の活路

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2017年12月現在。父に「お前は絶対にサラリーマンになれない」と言われた清水さんは、変則的ながら会社組織に属している。サラリーマンになった景色はフリーランス時代と比べてどうか。

「何かするときに自分の裁量だけでは決められないというのは感じますね。広報的な業務も担当しているので会社のプレスリリースを作ったりもしますが、完成しても上司や関係者に確認する時間を計算して動かないといけない。あと、設定がうまくいかなくて深夜まで会社のラボにこもるとかもNG。そういう時間感覚は新たに学ばせてもらいました。

そうはいっても、ストレスはあまり感じないですね。自分の得意分野以外に詳しい人、たとえばHDDやSSDなどのストレージに詳しい人の話を聞けたり、一緒に組んで企画したりできるのが楽しくて。基本的に好きなことをやらせてもらっていますから」

オーバークロックの伸びしろのあるCPUの選別品を売り出すアイデアも入社した2カ月後には実現し、系列店で販売されるなど、社会の風通しもまずまずいい。週末に全国の系列店に出向いて店頭イベントするのも恒例になっている。ただ、オーバークロック仕様のBTOパソコンなど、当初の計画はまだ半分も形になっていないという。

「いろいろと忙しくなりすぎたのもありますし、実績を積んでいかないとGOが出ないプロジェクトもありますから。イベントも頑張りつつ、いろいろ学んでいきたいと思います」

プロをそれで食べていけている人と規定するなら、今の清水さんはプロのオーバークロッカーといえる。しかし、大会費用をすべてまかなえるまでには至っていない。現在の経済的な余裕は多忙のために大会から遠ざかっているためという面がある。両親への100倍返しなんてまだまだ遠い状況だ。

貪欲に稼げるアイデアを探し続けている

だからこそ、今も貪欲に稼げるアイデアを探し続けている。

「僕は昔から3年先のことを考えて動いている節があるので、2020年くらいまではけっこう具体的な道筋が頭にあります。10年後もおぼろげには。それ以降は不確定要素がいろいろ絡んでくるから、考えても無駄ってなっちゃいますしね(笑)。

ただそれでも、仮にそのときにオーバークロックそのものが消滅したとしても、何かを一から始めて極めるまでやると思います。努力して磨いた腕で食べていく、という根本的なところは大切にしていると思います」

世間体や遠慮など、自分にとって無駄なものはとことん省いてきた。そのぶんのリソースを夢中になれるものに注ぎ込み生活源にしていく。清水さんの10年後20年後の姿は想像できないが、根底のところは変わらないだろうと思った。

古田 雄介 フリーランスライター

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ふるた ゆうすけ / Yusuke Furuta

1977年生まれ。元葬儀業のライターで、キャリアは15年。デジタル遺品や死後のインターネットコンテンツの行方などを追っている。著書に『故人サイト』(社会評論社)、『中の人』(KADOKAWA)など。

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