2017年の金沢に続いて来年は琵琶湖の離脱が確定し、新潟での開催についても今回の懇談会時点では未定だという。この事実だけをみると、爆発的な人気を誇ってきた「ラ・フォル・ジュルネ」の神通力もここまでかと考えがちだが、それはいささか違うようにも思える。金沢がそうであったように、琵琶湖も独自路線の音楽祭を開催する方向に進むのだろう。
そしてその下地には「ラ・フォル・ジュルネ」方式とでもいえる優れた音楽祭の熱とノウハウが確実に生かされるに違いない。地方におけるクラシック文化の芽を育んだという意味において、日本における「ラ・フォル・ジュルネ」の影響力は限りなく大きいと言えそうだ。
2018年のテーマは「モンド・ヌーヴォー」
豊島区との協力体制をベースに、東京での一極集中に特化する「ラ・フォル・ジュルネTOKYO」2018年の開催テーマは、「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」と発表された。
その意味を主催者側は次のように説明している。
「いつの時代にも多くの作曲家たちが人生のある時期、母国を離れて外国に移り住んできた。20世紀には、ラフマニノフ(1873~1943)やプロコフィエフ(1891~1953)、ストラヴィンスキー(1882~1971)、バルトーク(1881~1945)、シェーンベルク(1874~1951)、アルベニス(1860~1909)らが、全体主義体制からの圧力によって生まれ故郷や住み慣れた土地から離れることを余儀なくされ、バロック時代のリュリ(1632~1687)、ヘンデル(1685~1759)、スカルラッティ(1685~1757)などは、異国への好奇心や雇い主およびパトロンの移住に伴って、あるいは外国での成功を夢見て新天地を目指したのだった」
この音楽史上の動きはとても興味深い。まさに2018年の「ラ・フォル・ジュルネ」は、作曲家たちが好むと好まざるとにかかわらず、運命に導かれて移り住んだ新天地である「新しい世界」で生まれた作品の数々が披露される音楽祭になるのだ。
新しい世界へと開かれた精神が異文化と出会って生まれた作品とは、たとえばどのような音楽が該当するのだろう。「強いられた亡命」の中から親しみやすい作品を選んでみると、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」、コルンゴルト(1897~1957)の「ヴァイオリン協奏曲「などが挙げられる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら