20代に共感するオジサンがキレられるワケ

「わかるよ」と傾聴したら「わかるはずない!」

そもそも、世代のギャップなどが無かったとしても、人はそんなに簡単に共感や理解などできません。それなのに、「わかっている」と言われると、言われた方は言った方の意図とは逆にムカつくことでしょう。「立場の違うあなたがなぜ私のことをわかるのか」とか「万一、もし本当にわかっているんだったら、なんであれやこれをしてくれないんだ」とか、いろいろな思いがこみ上げてくると思います。

距離を縮めたくて共感の姿勢を見せているのであれば、なおさら逆効果です。そんな遠くにいる人がいきなり共感だなんて、違和感を持たれても仕方がありません。そんな共感をするのであれば、わからないものはわからないという姿勢で臨むほうがだいぶマシです。

この「上司は部下に共感すべし」の、そもそもの元ネタとも言える上述のロジャーズの定義する「共感的理解」も、実は、「相手の私的な世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じ取り、しかもこの『あたかも~のように』という性質を失わないこと」と定義していることにも注目です。特に後半の「あたかも」を失うな、というところです。言い換えれば、実際には理解なんてできてないということを忘れるなということでしょうか。

「共感的理解」の原語も、“sympathy”(≒同情)ではなく“empathy”(≒感情移入と訳されることが多い)であり、相手の気持ちをさもわかったように、オレも同じ気持ちだと同一化して振る舞うことを指してはいません。似て非なるものですが、大事なのは相手の気持ちを理解しようと、相手の立場をイメージしてどんな気持ちだろうと想像する(感情移入)ことではないでしょうか。

共感しようと努力することが評価される

ですから、20代の若者にオッサン世代が「わかるよ」と軽々しく言ってはいけません。もちろん悪意はないことは承知していますが、それでも相手を不快にさせてしまうかもしれません。つい「わかるよ」と言ってしまうオッサン世代の本意を汲むなら、おそらく「わかるよ」ではなく、「わかろうと努力をして一生懸命想像をした結果、このような気持ちではないかと思ったのだけれどもどうだろうか」ということではないでしょうか。

もし、こう告げたのであれば、その答えがいくら的外れであったとしても、世代ギャップや立場の違いを乗り越えて、本気で自分のことを理解しようと努力してくれているということが伝わり、そのこと自体についてはさすがに若者自身もムカついたりはしないのではないかと思います。そして、間違っていれば、「本当の僕の気持ちはこうなんですよ」と、胸襟を開いてくれるかもしれません。これで、ムカつかれるのであれば、別の理由があるのでしょう……。

文:曽和利光/株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長

1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
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