越前屋俵太「テレビの異端児」が送る波瀾万丈

事務所に属さない稼ぎ方と「引退説」の真相

なぜ街でのロケにこだわったのだろうか?

「ロケだけにこだわっていたわけではなくて、おカネをかけたスタジオでの撮影にも興味はありました。ザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』(TBS)の世代ですからね。ただ大阪ローカルですからおカネがない。残念ながら大掛かりなセットは作れなかった」

セットが作れないなら、街に出たらいいと気がついた。街に出れば、電信柱もあれば、交差点もあり、公園もある。

「街に出たら、何でもありだ!!」

と思った。

僕は、スタジオを捨てた

筆者は、著書『想定外を楽しむ方法』を読んで初めて越前屋さんが完全な“フリーランス”であることを知った(筆者撮影)

「アマゾンが店舗を放棄して世界最大の本屋になったじゃないですか。ウィキペディアは編集権を放棄して世界最大の辞書になった。僕は、スタジオを捨てたんです。スタジオを放棄することで世界最大のスタジオを手に入れたんですね」

越前屋さんの企画の主役は“街”であり、“道行く人々”だ。

「あくまで街が主役で、街を面白く見せるために自分が出演せざるをえなかった。街に普通のお父さんがいて、お父さん自身はおもろいことする気は全然ないんだけど、僕という要素が加わることで、お父さんが面白くなるのではないだろうか? なんて考えるわけです」

若者を中心に、越前屋さんの街ロケは受けた。番組の放送から34年が経った今でも、当時の視聴者たちが「死ぬほど笑った」と語っているのを耳にする。

「若造がどれだけ企画会議で偉そうなこと言ったって、結果が出なければ意味がないんだけど、たまたま結果が出ちゃったんです(笑)」

ただ結果は出ているが、かなり激しくケンカもしているので、制作会社内の雰囲気はよくなかった。プロダクション(芸能事務所)に所属していない越前屋さんはもちろん誰からも守ってもらえない。

「おいしいモノ(アイデアや手柄)は取り上げられて、アメ玉(小遣い程度のギャラ)を渡されて後はほかされるんです。普通は悔しいと思うのだろうけど、自分はそもそもどうでもいいと思ってるから、1回5000円ももらえるいいアルバイトだったなって思いましたね。さすがに『君はもういらないよ、さようなら』って言われた時はちょっと悔しかったですけどね……。『テレビってそんな世界ですか? しょうもな!!』って開き直りました」

しょせんテレビも大人の世界、実力じゃないんだ……と痛感した。ひたすら面白さだけを突き詰めていく世界ではなく、組織論がまかり通るサラリーマンの世界だと思った。

「でも、自分としては自信がつきました。僕がおもろいと思ったことをやったら、おもろいと思ってもらえたからね」

もうテレビに未練はなかった。

大学に戻って広告代理店に入って広告を作りたいな……などと考えていた。

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どん底の2000年代を経て鮮やかなV字回復を果たしたプロレス界の雄。キャラクターの異なるスター選手を複数抱え、観客の4割は女性だ。外国人経営者の下、動画配信や海外興行など攻めの姿勢を見せる。株式上場も視野に入ってきた。