教えるのは嫌だったが、ならば逆に生徒から教わればいいと気づいた。
「ゆとり世代と呼ばれている彼らは、日本をどう思っているのだろう?」
「若い世代は、SNSをどうとらえているのだろう?」
教わりたいことは無限にあった。
「今の若い人たちは、とても共感したがっているし、それぞれが多様化しているよね。僕は『面白いってどういうことだろう?』っていうのを教えているんだけど、僕らの頃はメディアも統制されていて『面白いとはこういうことです』っていうトップダウンがありました。でも今はSNSや個人サイトなどの影響もあって『私にとってはこれが面白いんです』って言える時代になったと思いますね」
越前屋さんは、ユーチューバーたち(動画サイト・ユーチューブに動画をアップして収入を得る人たち)が既存のマスメディアとは関係なく、自分で面白いと感じる動画を配信しておカネを稼いでるのはとても正しいと思う。
「誰かがやってることは、やらなくていいよね。僕は『あの人にできるなら、僕にもできるんじゃないかな?』とは思ったことがない。ビートたけしさんのことは大好きだったけど、ビートたけしさんになろうとは思わなかった。やっぱり、唯一無二にならないといけない。ド素人でも、自分がオリジナルだって思った瞬間からプロになれる」
“決めてしまう”と可能性は極端に狭まってしまう
越前屋さんには学生たちに言いながら、つねに自分にも言い聞かせている言葉があるという。
「不安だとつい“決めよう”としてしまうけど、“決めてしまう”と可能性は極端に狭まってしまう。“決めず”にいることはとても不安でドキドキすることだけど、でもその代わり可能性は無限に広がっていくんです。この感覚を大事にしてほしいと思う」
世の中に送り出した生徒はすでに7000人を超えている。慕ってくる生徒も少なくない。
「のんきに先生をしてる場合じゃないぞ、とも思うんですけどね(笑)」
最近ではいろいろなところで「復活するんですか?」と聞かれるという。ただそもそも引退したつもりもなかった。
「引退というのは世界的に活躍したスポーツマンとか、たとえば上岡龍太郎さんみたいに一時代を築いたような方が言うようなことで、僕なんかはそこまで認められてないので引退なんておこがましいです」
そもそも越前屋さんが引退したという話は、大阪のラジオから広まったデマだったという。ただ、事実上引退していたのには変わりはない。筆者をはじめ、復活してほしいと思っている人は、少なくない。
「僕は、バンドマンとかコンビ芸人などを見て、楽しそうだなと思ってうらやましかったんですよ。俺はいつもピンだし寂しいな、って。でもこの頃、本当に越前屋俵太はピン芸人だったのかな?と思うようになりました」
越前屋さんが、街で取材をするときにはいつも隣に人がいた。路上でシャンプーをしたおじさんも、公園で話をしたおばあちゃんも、その瞬間瞬間は越前屋俵太とコンビだったんじゃないだろうか?
「僕は大勢の相棒たちに相談せず、勝手に解散してしまってたんだと思う。引退じゃなくて解散。だったら復活ではなくて再結成したいと思う。越前屋俵太再結成ですね。1回でも僕が面白いと思った人たち、そして初めて会う人たち、一緒に面白いことやりましょう!! 今はそんな気持ちですね」
越前屋さんが戻ってきてくれるのはとてもうれしい。まだどのような形で表現をするのかは決まっていないが、それでもきっとおもろいはずだ。再結成した“越前屋俵太”を心待ちにしたい。
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