後先考えず辞めたのだから、当然ヒマになった。どんどん営業の数も減っていく。どうしようかな?と思っていたら、「世界ふしぎ発見!」のプロデューサーから電話がかかってきた。番組に、ミステリーハンターとして出演してほしいと言われた。
そのプロデューサーは前から出演してほしいと思っていたらしいのだが、「探偵ナイトスクープ」が引っかかっていたという。
「『探偵ナイトスクープに出てるのイメージよくないよ』って言われて。あの手の関西ローカル番組が、関東の人間にとって印象がよくないのはわかっていたんですが……『そんなに面白くないですか?』って思いましたね(笑)。何がどうなって仕事が来るのか、本当にわからないもんです」
渡りに船で仕事を続けたが、それでもやはり徐々に仕事は減っていった。
芸能界とプロダクション
仕事がなくなる大きな理由の1つは、越前屋さんがプロダクションに所属しないフリーランスだということだ。
フリーランスの芸能人は非常に珍しい。特にお笑い芸人は、そのほとんどが吉本興業や松竹芸能などの大手プロダクションに所属している。
なぜ、越前屋さんはフリーランスにこだわったのだろうか?
「芸能界でプロダクションに入らないとうまくいかないのは最初から百も承知でした。それでも、自分のやり方でどこまでいけるんだろう? そういう戦いを挑んだんですよ」
島田紳助さんには、
「芸能界はレースみたいなもの。みんなレース場のコース内で速さを競っている。お前は確かに速いけれどコースの外を走っている」
とたしなめられた。
「もちろんわかってるんですけどね。でもコースの外をすごいスピードで走ってるヤツ、カッコイイじゃないですか。僕だったらファンになる。ただコースの外を走っていてもおカネは儲からない」
ミュージシャンならインディーズでもおカネを稼ぐことができる。CDを売って直接おカネを手に入れることができるからだ。
しかしテレビタレントの場合、財布は番組プロデューサーが握っている。どれだけ頑張っても、プロデューサーに嫌われたらおカネは稼げない。視聴者は、どれだけ笑わせてもおカネを払ってくれないのだ。
越前屋俵太は、企画会議でケンカをするし、ヤラセも嫌う、めんどくさいタレントだ。プロデューサーに嫌われることが多い。
逆に、そんな状況でも20年近くもテレビに出続けることができたのは、すごいことなのではないだろうか?
「確かに奇跡的ですよ。でもそこにはカラクリがあります。芸能界で事務所に入らないのにテレビに出れてるっておかしいんです。絶対にありえないことなんです。ということは、裏でなんらかの力が働いていたってことなんですよ」
大橋巨泉さん、ビートたけしさん、黒柳徹子さん、草野仁さんなど、芸能界で本当に力がある人が「俵太、面白いんじゃないか。使おうよ」と推してくれたから、テレビに出れていたのだろうと、越前屋さんは分析する。
「なんでそう思うかっていうと、現場に行くと露骨に嫌そうな顔されるからです。口には出さないけど『僕たちはあなたを認めていないよ。○○さんが言うから出してるだけだぞ』っていう雰囲気が満ち満ちていました」
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