相撲協会の対応は、なぜこうも非常識なのか 協会に不足しているのは「共感する能力」だ

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今回の問題を、もっと身近なテーマに置き換えて考えてみよう。仮に、今回起きたことが学校内や職場の出来事だったらどうだろうか。

「仲間内で遊びに行ったカラオケボックスで、後輩の態度が悪いからと説教をしていたら、彼女からメールが入ったと言って笑いながらスマホを弄り始めた。ムカついたのでリモコン使って殴った。後輩の態度がなっていないのを正そうとしただけだ」

「弊社の社員が飲食店で後輩社員に暴力行為を行った。彼は責任をとって辞職すると話しているが、実にもったいない。すばらしい能力を持った社員だったのに」

こんな説明の仕方が許されるはずはない。

他にも引退会見には不思議な言葉遣いがあった。それは「横綱としてあるまじき」という部分である。横綱という品格が求められる地位だからこそ、暴力を用いるべきではなかったと読めてしまう。真意はわからないが、本来ならば「社会を構成するひとりの人間として(暴力は)あるまじき」行為だったと言うべきだ。

ものごとを“整理”し、それぞれに正しい対処を行う

日本相撲協会内の問題をどのように解決していくのか。指導の中で使われる暴力に対して、どう対処していくべきなのか。あるいは、もう少し踏み込むならば、ライバル同士である別部屋の力士が集まり、地方巡業とはいっても八百長事件を経た大相撲において興行期間中に親睦会が開催されることの是非も問わなければならない。

こうしたことは、暴力問題とは別に協会内で解決しなければならない。解決できないのであれば、このネット時代、協会内と一般社会の間にある常識の乖離があからさまなものになり、人々からの支持を失うだけだ。

ネット時代には文字や画像、動画などの形で、個人の意思がさまざまな形で表出する。そうした中で、現状の認識や物事の捉え方が乖離したまま一方的に情報発信しても、決して共感は得られない。

そして共感を得られなければ、さまざまなところから「おかしい」「常識がない」と意見が上がってくる。ふだんはさほど大相撲に興味がない人たちでさえ、そこに自分の意識や常識との乖離をみれば「なんだそれは、ヒドすぎる」と声を上げ、そのひとつひとつの声が新たな非難の声を生み出していく。

暴行傷害事件に関しては、厳正な捜査のもとに法的な裁きを受けるべきだろうと思うが、今回のような非常事態において、どう危機に対処してコミュニケーションを取っていくべきなのか。さまざまな意味で今回の事例は良い教材となるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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